Bill Gatesの教育論

教育の本質は?にたくさんコメントをいただいた。「教師の質が悪い」というご意見もいただいたが,現状はうちの情報教育課程では企業より教職のほうが狭き門だ。優秀な人材がこれだけ教育界に行って,なぜ教育が改善されないのか。構造的な問題があるのではないか。

Bill GatesのTEDでの講演 Bill Gates unplugged の前半は発展途上国の医療の話で,生きた蚊を会場で放って話題になったが,後半は教育の問題を熱く語っている。スライドは以前よりシンプルで良くなったが,まだ改良すべき点がある。

Bill Gatesのスライド

このスライドは教師のパフォーマンスを決める4要因を挙げたものだ。いまいち意味不明で,字も小さいが,上から順に Past Performance, Math Major, Teach for America, Masters Degree in Education とある。要は教育学の修士号を取っても教師としてのパフォーマンスは上がらないし,(このグラフにはないが)年齢もほとんど関係ないが,残念ながら教師の給料を決めるのは修士号と年齢だという。

Gatesは成功例として KIPP を挙げ, Work Hard. Be Nice. という本を薦めている。さっそく注文した。

優秀な人材は優秀か

> 優秀な人材がこれだけ教育界に行って,なぜ教育が改善されないのか。

優秀な人には、優秀じゃない人の気持ちがわからないってこともあるんじゃないかと思ってます。
私は優秀じゃないですが、それでも、「何でこれがわからないんだ!」っとイライラしてしまうことが度々あって、良い教授法を模索する毎日です。 わかっている人が「わからない状態」を知るのは難しいですね。 (とはいえ、「わかろうとしない」人はどうしようもないってことは、わかってますが、わかろうとしない人たちが大量生産されて大学に入ってきているわけで、、、)

Re: 優秀な人材は優秀か

確かにそういう面があるようです。
修士を持つ先生もパフォーマンスは同じというのも,そういうこともあるのかもしれません。
一方で,科学のわからない先生というのも怖いし,ここでいうパフォーマンス(受け持ちクラスの平均点)が上がらなくても,高学歴の先生が必ずしも悪いとも思えません。

弁当食べる暇も無い?

「日本の教師、長~い勤務、持てない自信 比較調査」
http://www.asahi.com/national/update/0216/TKY200902160427.html

 やはり人間,心と体に余裕が無いと新しいことにチャレンジするガッツが枯れて行きます.近頃の私はポッコリ出てきたお腹を見ながら,これではイカンと思いつつ,ついつい夜更かしして昼間に眠いです.色々と調べたり試したりしていると家に帰るのは毎日22時頃ですからねぇ.おっと,そろそろ帰宅しなくては.

KIPPの効果

KIPPは観察的にはめざましい成果を出していますが、治験によって評価されていません。independent reportsを見ると、一番厳密そうな評価は、治験群(メンフィスのKIPP校5-6年生)と統御群(近隣学校の同じコーホート)との異時点間比較です。

KIPPは自主参加なので、この成果がKIPPという教育方法によるものなのか、自主的に参加した学校の校長、教師、生徒、親が平均よりも優れていたのか、厳密には分かりません。仮にKIPPが原因だったとしたら、KIPPのどのコンポーネントが最も効果的なのか、各コンポーネント間の相乗効果(背反効果)はどうなっているのか、などの実験をすると、背後にあるメカニズムへの示唆に富むと思います。ただし、これはアメリカというコンテクストでの結果なので、ビル・ゲイツ氏が想起しているような途上国でうまくいくかは別の問題です。期待は十分に持たせてくれますが...ゲイツ氏の財団が盲目的にKIPPを適用するのではなく、科学的な研究も同時に実施することを願っています。

Re: KIPPの効果

コメントありがとうございます。

ちなみにビル・ゲイツの後半の話はアメリカの教育の改善の話で,途上国の話ではなさそうです。

科学的な研究も同時に…

 観察的にしろ、めざましい成果を出している手法を採用しようとする態度は、
競争主義としかとれない詳細な成績公表だけにこだわったり、
労働組合を非難することに汲々としていて、調査結果では有効だとされる学校図書館の整備を前面に打ち出さない日本の政治家たちに比べるとまだましではないでしょうか…
 まぁ、読書が有効と言っても、いまいちメカニズムははっきりしていないと言われるとそれまでではありますが…
http://s04.megalodon.jp/2008-0808-2335-57/www.nikkei.co.jp/news/shakai/2...

Re2: KIPPの効果

その通りでした。マラリアとごっちゃになっていました。すみません。ご指摘有り難うございました。

図書館の効果

釈迦に説法のおそれを犯しつつ...大事なことなので書かせていただきます。図書館と成績の正相関の背景には、図書館を建てる(ほど意識が高く予算も潤沢な)学校では成績のよい生徒が多い、ということもあり得ます。ですから、意識も高くなく、予算もあまりない地域でも図書館を建てるべきか、それよりも教員を増やすべきか、などの検討が必要です。そうした検討には、図書館を建てる前に図書館建設が成績に与える効果を正確に知る必要があります。これはKIPPと同じですね。

図書館について

 既にご存知かとも思いますが、小中高の教育を考える際の「図書館」というと学校図書館のことになるのが普通です。(公共図書館でも児童サービスやヤングアダルトサービスは重要視されていますが。)
 さて、学校図書館は「置かれなければない」と法律(学校図書館法第三条)で規定されている施設です。また、同法第六条においては、「学校の設置者は、(中略)学校図書館を整備し、及び充実を図ることに努めなければならない。」と規定されています。

 もちろん、学校図書館のための補助金を他に転用する自治体は枚挙にいとまがありませんし、司書教諭・学校司書がきちんと仕事ができるようにするにはそれなりの人件費がかかることを踏まえると、まともな学校図書館という存在が、その地域の教育に対する意識の高さや予算の潤沢さの結果であり、好成績と相関はあっても因果関係はない、という可能性は無視できないものがあります。その意味では、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)や学校図書館学の研究についてそこまできちんと分析したかも吟味する必要はあるかと思います。

 ただ、私が指摘したいのは、せっかく行われた全国学力テストでありながら、そこで見えてきた分析結果はまったく無視して、成績を上げるためには、市町村別の点数を公開するほかないかのような主張をしたり、統計処理すればすぐに棄却されるような某団体の影響力を声高く言い立てたりする為政者に比べると、調査上の問題があり治験上の問題はあるにせよ、目覚しい結果を出している手法を採用しようとするほうがまだましではなかろうか、という点です。

>その地域の教育に対する意識の高さや予算の潤沢さの結果であ

>その地域の教育に対する意識の高さや予算の潤沢さの結果であり
 意識の高さや予算の話以前として,(ぶっちゃけた話)「司書教諭より生活指導担当者を専任にした方が...」という学校の方が多いと思います。

ブックハンティング

 本校(鈴鹿高専)では,学生代表(図書委員)によるブックハンティングというイベントが年に1回あります.クラスの学生から要望を集め,代表学生たちが本屋に行って好きな本を選びます.いままでは地元の書店に行っていたのですが,今年度は名古屋の丸善に買出しに行ったようです.こうして学生が購入してきた本(ライトノベル含む)の貸出率は非常に良く,制度としては成功例の一つです.
 専門書も,工学系の学校ですので潤沢です.毎年,全教員に平均3万円程度の予算が割り当てられて,学生の勉強に役立つ専門書を選出して図書館に入れて貰っています.先生方には仕事が増えるので面倒な作業ですが...でも楽しみにしています.気になる本があったらAmazonのカートに入れておき,申請時期にはそのリストから選んでいます.
 一般市民(企業の方もOK)にも開放されているのですが,意外と知られていないようです.三重県立図書館よりも専門書の量では遥かに勝っています.某M大に編入学した学生が,レポートの課題を解くためにわざわざ本校の図書館に戻ってくるくらいです(笑).

 やはり学校図書館が充実していると良いですね.私もたまに足を運ぶのですが,時間が無いのでジックリと腰を据えて読んでいられないのが残念です.

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