波形グラフの縦軸?

音の標本化・量子化について,理屈だけではあまり理解していないようなので,Windowsのサウンドレコーダーを使って自分の声を録音してWAVE形式で保存し,WAVE file format にある dumpwave.c をコンパイルしたものでテキスト化し,Excelで読み込んでグラフを描かせ,自分の声の周波数を読み取らせる実習をした(その過程で dumpwave.c の改良・デバッグができた)。

学生たちの波形グラフを見ると,縦軸を「振幅(dB)」としているものがあった。「これ全然違うよね」と言って,その場で「音 標本化 量子化」でググってみたところ,見つかった最初のサイトのグラフの縦軸が学生の描いたものと同じ「振幅(dB)」になっていて,びっくりした。「振幅は最大の振れ幅のことで,dBはその対数だから,まったく違うよね」と言ったところ,「では何と書けばいいのですか」と聞かれて,さらにググったのだが,そのときは縦軸に何も書いてないものしか見つからなかった。

気圧の振れ(音圧)かもしれないが,量子化の対象はマイクを通った後の電圧だから,むにゃむにゃと長い答えをしたところ,「単位は何ですか」と聞かれた。-32768〜32767の値はその電圧を量子化したもので,1単位が何ボルトに当たるかは場合によって違うので,特に書かなくていいと答えたのだが,グラフの目盛りには必ず単位をと教えていることと矛盾しているように思われた気がする。もっと端的に,こういうグラフの縦軸にはこう書け,という答えはないだろうか。「電圧(任意単位)」?

なお,間違った音の標本化・量子化のページについては直してもらうようTwitterでお願いした。

AD変換するということは...

AD変換すると言うことは,電圧を変換するなら電圧で正規化しているので,AD変換後の値には単位がないのは当然です.LSBを1として正規化したと考えると,AD変換後の値は整数で表されますし,フルスケールで正規化したと考えれば有理数で表されます.DA変換は逆に無次元の量をLSBまたはフルスケールを与える単位(通常電圧または電流です)を有する量に変換する操作です.それでなければ,メモリ中に蓄えられているAD変換後の情報には単位があることになります.つまり,基底(単位)とスカラー量(整数あるいは有理数)に分解して,スカラー量の方だけを云々していることになります.基底はスカラー量とは別に保存しなければ,あとでAD変換前の値を復元できなくなります.こういう考えではいけないのでしょうか?

軸は無次元のこともある

おっと,肝心のことを忘れてました.奥村先生の最初の疑問に対しては,「通常,軸には単位を付しておくべきであるが,無次元量の場合は単位を付け(られ)ない」でよろしいのではないでしょうか.

音声などの音圧を扱うときは基本的に対数を取ると思います。

音声などの音圧を扱うときは基本的に対数を取ると思います。
dBではなくてdBSPLのほうがいいかも。

波形グラフの縦軸について

標本化で取りだした瞬時の電圧値を波形の瞬時振幅と呼びます.
なので波形を表示するグラフの縦軸はやはり「振幅」と書くことが多いです.
(dBと書くのはあきらかに間違いですが)

アメリカ音響学会の機関誌 (JASA)では"Amplitude"も"Voltage"も見かけました.いずれの場合も単位は書かないことが一般的なようです.

「Wikipediaによると」振幅は >

「Wikipediaによると」振幅は

> 音波や音響信号では、振幅は便宜上音圧を指す。
> ただし粒子の移動(空気やスピーカーの振動板の動き)の振幅を指すこともある。
> 振幅の常用対数を取ったものはデシベル (dB) と呼ばれ、振幅0の場合には -∞ dB となる。

ということなので、音圧のグラフを描く場合に限って言えば「振幅(dB)」でも誤りではないのでは。

たくさんのコメントありがとうございます

一夜明けたらたくさんのコメントをいただいていました。皆さんありがとうございます。

「瞬時振幅」でググってみました。 V(t) = A(t) sin ωt の A(t) を瞬時振幅と呼んでいるもの以外に,確かに V(t) のほうを瞬時振幅と呼んでいるものもありました。どちらが一般的なのでしょうか。

単位については,無名数として扱うのがすっきりしますよね。ただ,学生が気になったのは,縦軸に電圧と書くのだったら V とか mV の類が単位ではないかということだと思いますので,例えばフルスケール5Vの16bit ADCなら 5・2-16 V が単位ということを聞いているのかとも思いました。

dB単位になるのは音圧ではなく音圧レベルですが,これを音圧と呼ぶことも多いので,混乱する人が多いのはうなずけます。

縦軸が振幅(dB)な図

私がたまたま見つけたのは音の標本化・量子化です。ここはそのうち訂正されると思いますので,ご覧になるなら今のうちです。たぶん探せばほかにもあると思います(あったら教えてください)。

[念のため,これはコンピュータミュージック講座音楽を始めよう!の中の枝葉の部分で,講座全体はとても読み応えのあるすばらしいものです。]

振幅と位相は

振幅と位相(周波数)は正弦波(状のもの)の属性ですので,A(t)を瞬時振幅と呼ぶことに問題はありませんが,正弦波(状)でないものを問題にするのであれば,単に「瞬時値」としか言いようがないのでは?

正弦波の場合であれば,A(t)は(瞬時)振幅,V(t)は瞬時値でしょう.値として両者が等しいのはたまたま位相がゼロの場合だけですが,困ったことに振幅は負にならないので,縦軸に振幅と書いてしまうと正弦波のグラフが半波整流波形になるんじゃないかなどと怪奇な想像をしてしまいます(まんざら冗談でもないです.振幅に負の値を許すと,位相の方とどう折り合いを付ければよいのか考えなくてはなりません.よって,瞬時振幅A(t)を使って変調波を表すということは,定常的な正弦波を表すことからは大きなステップを踏み出していることになります.フーリエ積分でも振幅は正ですから,だんだん,横軸に時間を取った場合,縦軸に「振幅」と書くのが全くの誤りであるようの思えてきました.「振幅」は周波数領域における表示にだけ使用せよと言いたくなってきた.)

厳密には正弦波は振幅が一定のものを指すので「瞬時」振幅はおかしいのですが,意味は分ります.変調波を扱うときには「瞬時振幅」という用語がないと不便ですね.意図的な誤用(意味の拡張)ということで許容範囲だと思います.用語をあまり固定的に受け取ると身動きできなくなる一方,用語の定義をあいまいにするのも都合が悪い.どうすりゃいいのでしょうね.

日常語の「振幅」には変動する量の振れ幅という感覚がありますので,混同しやすいのだと思います.英語でもamplitudeと言ってみたりmagnitudeと言ったりして,結構あいまいな気がしていましたが,地震の規模は決してamplitudeとは言わないようですので,実は厳密な使い分けがあるのかも.

自分が何を言いたかったのか,よく分らなくなってしまいました.とりあえず,議論の材料だけ投げておきます.失礼いたしました.

Re: 振幅と位相は

詳しいご説明ありがとうございます。
実をいうと私も今まで縦軸に振幅と書いてあってもあまり気にならなかったのですが,明らかにおかしいdBが付いている図を見て意識的に考えたら振幅と書くこともおかしいのではないかと思えてきたというわけです。高校生は物理の波のところで振幅は変位のピーク値だと習っているのとの整合性もありそうです。
情報の教科書を執筆されているかた(次からは私もか)による検討をお願いしたいところです。

ごめんなさい.たしかにA(t)のほうを瞬時振幅と呼ぶののほ

ごめんなさい.たしかにA(t)のほうを瞬時振幅と呼ぶののほうが一般的だと思います.
なんかだんだん私も時間波形グラフの縦軸が「振幅」なのは不自然なんじゃないかと思いはじめてきました.
振動の状態という意味では「変位」という言葉が適切なのかもしれませんが,こういう表記をしたグラフはまだ見たことがないです.

非常に興味深い問題提起でしたので,もう少し考えてみました.
> 振幅に負の値を許すと,位相の方とどう折り合いを付ければよいのか考えなくてはなりません.
逆に位相側を固定 (搬送波の周波数を固定) した時にA(t)を求めようとすると,どうしても振幅が負になったり,(初期位相によっては)複素数になったりしますよね.
そう考えると,私は負の振幅が許容できるような気がしてしまいます.
搬送波の仮定をおかない上で (ω = 0) ,A(t)の分析をしてみた結果をプロットしたというのが,グラフの縦軸に「振幅」と書く気持ちなのかなぁと想像してみました.

個人的には「振幅」じゃないほうが良いのかもしれない,と思いはじめてきたのですが,「振幅」を使い続けたいという気持ちもありますので,もう少し勉強してみます.

単位はクーロン

 ”マイクを使って空気の振動を電気信号に変換して、電気量 で音を伝えていきます。”、この”電気量”の部分に引っ掛かってしまって先に読み進められませんでした。

 いやしかし素晴らしい偶然ですね。本日、外出した際に本屋で「大人の科学Vol.23 付録:ポールセンの針金録音機」を買ってきたところです。時代は再びアナログに回帰する、と、一人でと呟いていたところでした(笑)。

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 なお、そもそもの投稿に関して。
 縦軸を振幅と表記するのは、振動的な挙動を示す物理現象をグラフ化する際には許されると考えています。ダイナミックレンジが規定されている(今回ですと-32768〜32767)のであればさらに好都合ですね。ー1から+1に正規化してしまえば、無次元の振幅です。
 振動的な波形の最大値を振幅と呼ぶことはありませんでした。「最大振幅はピーク・トゥ・ピークで何々ボルト」と言っています。振幅は時間と共に変化するものであるという認識です。

Re: 単位はクーロン

私も「電気量」にも引っかかりました。
「振幅」,分野によっていろいろのようですね。私も「(dB)」さえなければいいのかな,と思えてきました。

最初の論点は何?

読み返すほどに最初の論点が分からなくなりました.長文ですみません.

コンデンサマイクロフォンで音圧を測定するなら,音圧によって変化するのは電極間隔ですから,音圧に比例して静電容量が変化します.静電容量の変化は直接検出するのが難しいから,例えばエレクトレットコンデンサマイクロフォンではコンデンサを構成する電極に一定電荷(=電気量)を与えておいて,変化する静電容量に比例した端子電圧の変化分を取り出し(Q=CVの関係で,Qを一定値にしておく.CがC=C0+ΔCに変化すると,V=V0+ΔVに変化するので,ΔVを取り出す(直流バイアスを与える方式もありますが,結局ΔVを測定することには変わりない).この変換は非線形ですが,ΔCが小さければ線形と看做せる),これをAD変換するのが一般的だと思います.つまり,音圧に比例した電圧を取り出します.音圧と出力電圧の関係が分かっているマイクロフォンを使えば,出力電圧から直接音圧を測定(推定)することができます(標準マイクというものがあって,それを校正するための機械式のピストンのような音圧発生器があるのを見たことがあります.B&K社製.30年以上前の話です.).

したがって,最終的に得られたデータがAD変換後の電圧に対応した整数値の列であっても,マイクに加えられたであろう音圧が逆算できます.よって,縦軸にどうラベルを付けるかに悩む必要はないと思いますし,実際,換算は掛け算ができればO.K.です.言い換えれば,最終的に得られた量が最初に欲しかった量ではないわけですから,そのような場合に,AD変換した数値をグラフ化しても意味が薄いと思います(欲しかった物理量に比例しているので,雰囲気は分かりますが,縦軸の単位は音圧以外にしても意味がないのではないか?簡単な換算なのだから,比例係数の計算を実行すればよいだけではないか?).物理量の測定は,直接測定できる量以外は大方こうしたものだろうと思います.(元の発言での「電気量の変化」を測定する云々は違うような気がしますが,いずれにせよ,直接測定しにくい物理量を他の物理量に変換して(トランスジューサーあるいはセンサを使って)測定するのはごく普通のことです.)

SPLをdBで表すのは,日常環境における音圧の変化範囲が120 dB(エネルギーで12桁です)にも及ぶので,そのまま扱うのが不便だからという理由だけではないでしょうか.リニアなグラフから読み取れるのはせいぜい40 dBくらいでしょう.音圧の*瞬時値*の時間変化をグラフに描きたいなら,負の量のdB値は定義できませんので,縦軸にdB値を使うのはナンセンスです.一方,よく考えてみると,圧力は負にはならないので,通常,正負に振動していると思っている音圧は,実は圧力の変化分という事になります(通常,1013 hPa付近での圧力の変化を問題にしている).

何を言いたいかというと,縦軸をdBにするのは,音圧の瞬時値ではなく,包絡線の時間変化を表しているときだ,という事です.ずっと上の方の議論で,V(t)=A(t)sinωt という式が出てきましたが,このA(t)は負になることはなく(振幅ですから),ωよりも十分ゆっくりとした時間変化をする,という風に考えれば,諸々の疑問の辻褄が合うと思います(この辺は前の議論で瞬時値と包絡線の混同がありました.ごめんなさい).

ということで,本当は何を議論したかったのでしょうか?この議論で何か解決しましたでしょうか?

Re: 最初の論点は何?

問題のページが今ちょうど改訂中のようです。縦軸が「振幅(dB)」となっていたのが,現時点では「音圧(dB)」となりましたが,dBではおかしいのでまた変わるのだろうと思います。また,Pulse Coding Modulation および Pulse Codeing Modulation となっていたものがどちらも Pulse Code Modulation に直りました。改訂された後のページをご覧になったので最初の論点がわかりにくくなったのかもしれません。

こういう図の縦軸をその後もいくつか調べてみたところ,確かに「振幅」としているものがけっこうあり,それが慣用ならそれでもいいという気もしますが,高校で波動 V(t) = A sin ωt を教えるのに A のほうを振幅と呼ぶこととの整合性をとりたいという思いもあり,悩ましいところです。一方,この図の縦軸の単位がdBでないことは明白だと思うのですが。

センター試験の物理では

平成20年度センター試験の物理I p.8でパルス波のグラフがあり,縦軸は「変位」となっていました。ついでに理科総合Bで気温のグラフが-2℃から始まる棒グラフになっていてびっくりしました。

今は音の強さになっていますね。これもまずい。音の強さは振幅

今は音の強さになっていますね。これもまずい。音の強さは振幅でしょうから。縦軸は、測定値としては、もともと、圧力、もしくは、電位なのでしょうが、ゼロ点を移動してある場合は変位とするべきなんではないでしょうか。件のグラフの横線が軸のつもりであるなら圧力の変位(Pa)、浮いていて振動の中心を目立たせるためだけのつもりなら圧力(Pa)でいいでしょう。概念図なので。

もとの学生実験の話だったら電圧の変位(任意単位)がいいでしょう。圧力と測定電圧の直線性は保証できないでしょうし、AD変換は一応電圧に比例した出力を出すことになっているでしょうから。

しかし、そのグラフの下にあるPCMの説明もひどいものだと思います。2進符号化のところにパルスとか関係ないこと入れて誤解を誘うような、、、。リンクを増やしてPage Rankを上げるよりは沈めたほうがいいような、、、

音の強さが負になるのは

やっぱり困りますね。まだ先方は試行錯誤中なのでしょう。

なぜ件のページの記述を取り上げているのか

トップページまで見てはじめて分りました.教科書会社のウェブページなのですね...
話題の出だしが奥ゆかしいご指摘だったので,トロい私にはピンときませんでした.
教科書自体の記述は確認していませんが,(記述があるのなら)正しい記述になっていることを祈るのみです.

さて,いくら情報の教科書のサポートページであっても,物理的に疑問のある記述は困りますね.また,他の科目で学習する内容と整合性のない記述も問題だと思います.

教科書の著者も,検定する人も,全ての関連科目について熟知していると言うわけには行かないでしょうから,よく探せば他(科目)にも似たような問題がありそうな気がします.センター試験にも同様の問題がありそう,と言うことですね.やっと話が見えた...

教科書のあらさがし

かつて情報教育Wikiで教科書のあらさがしや読書会をして,たくさん間違いを指摘したことがあります。今の教科書はずいぶん良くなったと思いますが,もしおかしい記述がありましたらお知らせください。

波形の縦軸は「電圧」におちつきそう

音の標本化・量子化のページが改訂され,波形グラフの縦軸は「電圧」になったようです。これなら問題なさそうですね。

古いエントリーへのコメントとなり恐縮ですが: グラフ軸の(

古いエントリーへのコメントとなり恐縮ですが:

グラフ軸の(dB)表記は、(無次元の)対数グラフ軸に「ログ・スケールである事」を明示する目的で(log_10)と書くのと同じ意味なので、問題ないような気がします。

もちろん、このエントリーの背景には
・無次元の相対デジベル: [dB]=[10log_10]
・基準値を持つ絶対デジベル: [dBSPL] (基準値:2×10^{-5}[Pa])、[dBV] (基準値:1[V]) 等
の混同があったことは承知しておりますが、明確な指摘が見当たらなかったので遅ればせながらコメントさせて頂きました。

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