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評価投票なら世の中が変わっていたかもしれない電子投票について書いた2ページ以降は見ないにいろいろ貴重なコメントをいただいた。 考えているうちに,昔書いたメジアンを使おうの後半部分を思い出した。これは朝日新聞2007-06-12の「脱・1人1票」という記事の紹介で,投票で一人を選ぶのではなく,各候補者に評点を付けてそのメジアンが最大の候補を選ぶというものである。朝日のデータベース「聞蔵II」のPDFでは肝心の図表が白塗りされているが,BalinskiとLarakiのサイト vote expérimental に朝日新聞のスキャン(PDF)も置いてある。彼らの方法(“majority judgement”)の数学的な解説はPNASの A theory of measuring, electing, and ranking という論文に詳しい。候補者の順序関係ではなく評点を用いることによってArrowの定理などで示される投票の限界を超えることができるというものだ。実際の選挙で本物の投票と並行して実証実験を行った結果が朝日新聞や上記vote expérimentalページに載っている。 同様の方法がRangeVoting.orgで唱えられている。こちらはメジアンではなく平均値を使う方法だが,代表値としてはtrimmed meanを含めいろいろ考えられそうだ。同サイトにはメジアンに対する批判も書いてある。ただ,BalinskiとLarakiは,単なる6点スケールではなく Très Bien, Bien, Assez Bien, Passable, Insuffisant, A Rejeter という具体的な評価値を用いる点が重要としているので,この批判は当てはまらないかもしれない。 こういった複雑な投票は紙ではたいへん煩雑になるが,電子投票なら簡単にできる。実際,AmazonやYouTubeなどで星の数で評価をすることにネチズンたちは慣れている。 BalinskiとLarakiの実験でも示されたように,評価による投票は選挙結果を大幅に変える可能性がある。特にラルフ・ネイダーのようなspoiler(であるかどうかは議論があるが)の影響を受けにくいのでゴアがブッシュに勝っていた可能性があり,イラク戦争は起こらず温暖化対策も進んでいたかもしれない。 [追記] vote expérimental の表をCSVにしたもの: ,Excellent,Very Good,Good,Acceptable,Poor,To Reject,No Grade Bayrou,13.6%,30.7%,25.1%,14.8%,8.4%,4.5%,2.9% Royal,16.7%,22.7%,19.1%,16.8%,12.2%,10.8%,1.8% Sarkozy,19.1%,19.8%,14.3%,11.5%,7.1%,26.5%,1.7% Voynet,2.9%,9.3%,17.5%,23.7%,26.1%,16.2%,4.3% Besancenot,4.1%,9.9%,16.3%,16.0%,22.6%,27.9%,3.2% Buffet,2.5%,7.6%,12.5%,20.6%,26.4%,26.1%,4.3% Bové,1.5%,6.0%,11.4%,16.0%,25.7%,35.3%,4.2% Laguiller,2.1%,5.3%,10.2%,16.6%,25.9%,34.8%,5.3% Nihous,0.3%,1.8%,5.3%,11.0%,26.7%,47.8%,7.2% Villiers,2.4%,6.4%,8.7%,11.3%,15.8%,51.2%,4.3% Schivardi,0.5%,1.0%,3.9%,9.5%,24.9%,54.6%,5.8% Le Pen,3.0%,4.6%,6.2%,6.5%,5.4%,71.7%,2.7% これをExcelに読み込ませ,評価を数値5, 4, 3, 2, 1, 0に換算してrange votingのように平均点を求めてみれば,最後の4候補の順位が少し変わり,最低はLe PenではなくSchivardiになる。
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