メジアンを使おう

昨日の会議で,学生による授業評価で,授業に出ていない学生が極端に辛い点を付けるので平均点が引き下げられてしまうという話を聞いた。たぶん授業に出ない学生は自分を正当化するために無意識に授業を低く評価するのであろう。それはそうとして,outlierに引きずられないためには平均ではなくメジアンの類を使えばいいと提案した。

たまたま今朝の朝日新聞に,先日のフランスの大統領選でオルセ市の3投票所で通常の投票以外に全候補者を6段階評価する投票の実験が行われ,投票者の74%にあたる1752人が協力したという話が載っていた。結果はメジアンで評価し,メジアンが同じ場合は,より良い評価と悪い評価の比で決める。ボルドーワインの格付け方法にヒントを得たという。この方法を使えば,3位だった中道のバイル氏がトップになり,4位だった極右のルペン氏が最低の12位になったという。1人の名前しか書けない従来の方法とは大違いだ。

アローの定理

アローの不可能性定理も押さえておくべき知識かと。

Re: アローの定理

絶対良い方法はないにせよ,より良い方法・より悪い方法はありますよね。例えば一人区ばかりの小選挙区制は国民が地域にかかわらず6:4の割合で二つの党を支持する場合でも結果が10:0になってしまうという点で悪い方法だと思います。

フィギュアスケート

フィギュアスケートの採点でも見るような Trimmed mean もこういう用途には良い気がします。

Re: フィギュアスケート

Trimmed meanもいいですね。フィギュアスケートでは最大値と最小値を外すんでしたっけ。

平均値以下は71.9%

今朝の朝日新聞に「71.9%の児童は1985年調査平均以下」というグラフが載っていました。非対称な分布の場合,平均以下が50%に必ずしもなりませんので,このようにして1985年と比較するのであれば,メジアンを使ったほうがいいように思いました。

スキージャンプの飛型点

スキージャンプの飛型点の採点でも、Trimmed meanが使われています。

Wikipedia の「スキージャンプ」から↓
> 飛型と着地姿勢は、実際に5人の飛型審判員によって行われる。
> 1人の持ち点は20点満点であり、公正を期するため、
> 5人中最高最低1名ずつの得点を除き、中間3名の得点合計が加算される。

授業評価でメジアンは賛成だが楽観できない

古い記事へのコメントとなりますが,季節柄ということでご容赦を.授業評価で平均よりメジアンを使った方がいいという結論には賛成です.ただ,あまり楽観はできないと思います.

というのは学生が内心で思ってる評価と公表されて欲しいと思ってる評価結果にギャップがあるためです.5 段階評価でたとえば内心では 3 と思っているような授業でも,その教員が嫌いだったりすると公表結果は最悪の 1 になって欲しいと思うことがあるでしょう.そのとき各人は後者の評価をつけるのが理論上つねに最適になります.内心思っている情報は引き出せません.

(理論上最適になるのは,たとえば自分の評価が中位の評価よりも低い場合,更に悪く評価をつけても結果には影響せず,よく評価をつけると結果を高める方向にしか作用しないため.後者の評価をつけることは,ゲーム理論でいう「弱支配戦略」になる.)

Re: 授業評価でメジアンは賛成だが楽観できない

なるほど。

授業に出てきていない学生が低い評価を付けることに対処するため,出席回数で重み付けして平均することも考えましたが,無記名評価では出席回数も自己申告なのでうまくいかないかもしれません。

弱支配戦略で思い出しましたが,裁判員制度では裁判員は(最も厳しい裁判官の意見より)刑を軽くする力しかないので,評決に参加したという満足感を得るためには刑の軽い方向に投じるしかないように思えます。

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