構造計算の再計算案はボツ

構造計算書が偽造しやすいわけで,構造計算書の審査を電子化すれば姉歯流の偽装は機械的にチェックできることを述べた。国交省もその方向で動き出したものと思っていたが,4月29日付朝日新聞の「偽りの構造—下—」に後日談が載っていた。国交省が一月にまとめた当初案では,「再計算センター」でパソコン26台,作業員26人で,20分/件で処理する。ちょっとローテクすぎる。電子申請にすれば申請と同時に無人チェックできるではないか——と考えるまでもなく,国交省案はボツになっていた。構造技術者協会集会で再計算センター案に危機感(日経BP)によれば「「[...] 再計算センターは、申請で出された結果と同じ答えを出すかを確認する役目を果たす機関」と説明すると、会場からは失笑が漏れた」。結局ピアチェック方式の導入が決まったようだ。日本建築構造技術者協会(JSCA)のサイトにはいろいろ専門家向けの提言や一般向けの解説が載っている。そもそも大臣認定のソフトで計算してOKならば安全とするところからまずかったのだろう。正しい設計をしていれば,計算そのものは封筒の裏で十分だ。そして,正しい設計かどうかは専門家がよく見ればわかる。うーん,確かにそうだ。物理屋としての私は納得した。ただ,一般人としての私は何か腑に落ちない。合否の客観性は担保されるのだろうか。

保険の件

http://www.jsca.or.jp/vol2/13sp_issue/200601/sp_issue0601-3.html

>保険は賛成だが、保険会社には構造設計者を審査する能力はないのでは
というのは、
外国では保険会社が審査機関を兼任し、設計士を雇って検証させている。保険会社だと自分の懐に直接かかわるので真剣にやるのだ。だから日本もそうなって欲しい
という話を受けてのことですね。すぐには無理でしょうけど日本でもそういうやり方をしていいんじゃないかと思います。

もう一つ、デジタルデータ提出について

この件はシャノン以来の雑音のある伝送路や産総研でやっているような伝送路内でのデータ改ざん防止と同じ考え方で考えれば良いような気がするのですがどうでしょうか?

1)元データが改ざんされているならそれは構造計算ソフトが弾くしかない
2)計算結果を(結果を示すダイアログを書き換えるなど低レベルな方法で)改ざんされるなら、同じく構造計算ソフトの問題になる
3)構造計算ソフトに、元データと計算結果を(検査機関、あるいは政府が発行する公開鍵で)暗号化して出力する機能を持たせる。設計者は暗号化されたデータを検査機関へ送る。検査機関は秘密鍵でそれを復号化するだけで一定の信頼性を担保できる

この仕事についてよく知らないせいか、これくらいのとこまでしか考えつきません。

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