チャートジャンクは役立つ?

Useful junk?: the effects of visual embellishment on comprehension and memorability of charts というペーパーを教えていただいた。ACM会員でない場合は,ほぼ同じものがここに公開されている。

どこかで見た絵だと思ったら,このブログで紹介されていたのを見て,忘れていた。

Nigel Holmesのグラフィックと,Rで学生が描いたような単純なグラフとを比較して,どちらが理解しやすいか,どちらが記憶に残りやすいかを,被験者を使って調べた研究である。案の定,Holmesのグラフィックのほうが記憶に残りやすいという結果であった。

これは,チャートジャンクは少ない方がよい,データ/インク比(data-ink ratio)は大きい方がよいというTufteの主張の反証ということらしい。

しかし,実際にTufteの本を読んだ人なら,情報密度の高い,目を見張るばかりの細密な図の数々に,感銘を受けたはずだ。棒が数本並んで「増えていますよ」だけしか読み取れないグラフなど,Tufteの本にもClevelandの本にも見当たらない。

Tufteの主張は,チャートジャンクにインクを使う余裕があれば,もっと多くのデータを盛り込む工夫をせよと言い換えることができる。殺風景な魅力のないグラフを描けということではない。大量のデータでもうまく視覚化すれば何かが見えてくるということだ。

Tufteのサイトに反論が載っているか調べたが,見当たらなかった。しかし,Holmesたちの図を載せたNew York TimesのOp-Edページへのコメントが掲示板にあった:Ask E.T.: Poor op/ed data graphic in New York Times。この図では,危険性と新聞掲載回数に負の相関があるように見える。コメントにもあるようにHoward Wainerがちゃんとした散布図を描いて,関連がないことを示したが,Wainerの妻はHolmesたちの図の方が好きだと言ったそうだ。

ありがとうございます.件の論文が発表された国際会議(CHI

ありがとうございます.件の論文が発表された国際会議(CHI)の文脈でいえば,本来伝える情報と関係のないはずの外観の審美的な要素が,実は情報の受け手の理解に影響している例がここ何年にもわたっていくつも見られます.それを踏まえるとグラフも例外ではないだろうという見方もできそうです.この論文のような比較方法はやり方が粗過ぎますが,今後もグラフの理解に関する議論は丹念に追って行きたいと思います.

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