鮭の頭と多重比較

死んだ鮭の頭のfMRI解析,以前に書いたブードゥー相関と似た話。多重比較はよほど注意しないと,何もないところから統計的に有意な結果が出てしまうことを皮肉った研究。

易しく解説すると,たとえば偶然では 1/20 の確率でしか起きないことが起これば単なる偶然ではなく何か原因があると考えるとする。これは性格テストのある項目と血液型との相関でもいいし,fMRI(脳の活動分布などを実時間で調べる装置)の一つのボクセル(体積素)の値でもいい。性格テストが n 項目あったり,ボクセルが n 個あったりすれば,確率 p の事象が起こる回数の期待値は np である。これは事象が独立であるかどうかによらない。全体として起こる回数の期待値 1/20 を維持するには,個々の確率は 1/(20n) でなければならない。言い方を換えれば,有意水準 p = 0.05 を維持するには,5個の値を調べるなら1個あたりの有意水準を p = 0.01 にしなければならない。このような考え方をボンフェローニ(Bonferroni)の方法という。多重比較の検定にはこれ以外にもいくつかの方法があるが,とりあえずこれを覚えておけば,「血液型と性格検査の何々の項目に有意な相関(p < 0.05)が見られた」といったことを言われたときに「何項目の性格検査を行ったのですか」と聞き返すことができるだろう。冒頭に挙げた鮭の頭の研究でも,この種の方法(FDR,FWER)を使えば誤検出が防げるとしている。

前提が間違っている

fMRI(functional MRI)は脳の局所的活動を測定する装置です。例えば、被験者にエッチな写真を見せて、脳の特定の部位の活性が上がったので、この部位が働いていると解釈します。そして、細かい事は省略しますが、基本的に脳の微小な血流の変化を測定しています。脳細胞が活性化すると脳細胞の代謝が上昇し、その結果として脳血流の増加が見られるという原理に基づいています。
 死んだサケのfMRIを測定して、変化があったと言うことは、脳細胞が生きていて、かつ血流が存在するという事を示しています。つまりこのサケは生きているという証です。死んでいるサケという前提がおかしいと言う事になります。私の解釈は、「釣られたサケが、特別の処置もされずに魚屋に並べられ、それをfMRIで測定したところ、脳と心臓が活動しているという確証が得られた希有な例」でしょうか。
 fMRIの専門家の話を聞いた事があり、「fMRIは非常に微妙な機械であり、ノイズ対策や調整が非常に難しく、世界でも正確に作動しているfMRIは私の所を除いて殆どない」と話していました^O^。サケか確実に死んでいるなら、この画像は機械のエラーである可能性が高いと思います。著者が本当に専門家なら、わざとうそを書いて、反応を楽しんでいるとしか思えません(全文を読む気にもならない)。それとも、投稿日は4月1日?。
 それにしても、こんなことにマシンタイム(機械を使用できる時間)が取れるなんでうらやましい。私たちのグループなんて3週間に数時間。それも来月は時間が取れず交渉中。貸して欲しい。

補正後の有意水準

> 有意水準 p = 0.05 を維持するには,5個の値を調べるなら1個あたりの有意水準を p = 0.01 にしなければならない。

Combination(5,2)=5×4/2=10 となって,p=0.05 を維持するには p=0.005 にしないといけない気がするのですが,いかがでしょうか?

Re: 補正後の有意水準

「5個の値を調べるなら」ですからこれでいいわけです。5個のものから2個とったペア全部について相関係数や差の検定をするなら,10個の値を調べることになるというわけです。

Re: 補正後の有意水準

コメントありがとうございます.
文の意図を読み違えてました.スッキリしました.

鮭の頭の裏話

The Story Behind the Atlantic Salmon にいろいろ裏話が書かれています。

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