「デジタルカルチャー日本」展示会

三重県文化会館で「デジタルカルチャー日本」展示会を見てきた。実際にEPSON PX-7500Nなどの顔料タイプの大判インクジェットプリンタで浮世絵を出力するところを見せてもらった。フレスコグラフィックスペーパー(Fresco Graphics Paper)というざらざらの紙がなかなかおもしろい。炭酸カルシウムを主体とした荒めの粒子を裏打ち紙に接着して水性インクジェットプリンタ用に表面処理したもので,A4で300円くらいとのこと。ARTS & CRAFTS GALLERYにこの展示の紹介とポスター(PDF)がある。A&C GRAPHICS PAPERがこれに相当するようだ。名刺をいただいたのは株式会社北辰の萬本さんだが,ここがA&Cの運営会社のようだ。

[2008-06-24追記] フレスコグラフィックスペーパーに印字されたものをScanSnap+キャリアシートで読み取ろうとしたのだが,エラーになって読み取れない。

伊勢型紙(形紙)

 形紙はカナ漢字変換の辞書に入っているけれども,広辞苑には無い.したがって正しくは型紙.と言いたいところですが,伊勢形紙も通用しています.
http://www.city.suzuka.mie.jp/cgi-bin/faq.cgi?209

 元々は着物の文様を染色する際の型であり,江戸時代には伊勢紀州藩から保護を受けて独占的に三重県鈴鹿市白子地域でのみ受け継がれてきた伝統技能です.ところが近年は着物の染色に形紙が使われることはほとんどなくなったため,このようなインテリアなどの分野に生き残りを賭けています.
http://www.osugi.co.jp/

 私は三重県に引っ越してくるまで伊勢形紙というものの存在を知らなかったため,国道23号線を車で走る際に目にする「伊勢形紙」という文字を「なんだろう?」と疑問に思いながら2,3年を過ごしてきました.
 鈴鹿市の伝統産業会館
 http://www.city.suzuka.mie.jp/life/shisetsu/9206.html
に行きますと,工芸品としての素晴らしい形紙作品を見ることができますし,実際に形紙製作体験もできます.

 重要無形文化財であり,人間国宝などの認定も受けた貴重な文化ではありますが,産業として衰退しつつあり,後継者不足(継がせるかどうか判断も難しい)でもあります.鈴鹿高専ではこの技能を教材として用いた工学的な授業を試みたこともあります.本来は彫刻刀を用いた4つの技法(突彫り,錐彫り,縞彫り,道具彫り)で渋紙に文様を刻むのですが,それをA3サイズまで加工可能なレーザー加工機を購入し,コンピュータ制御で再現するという授業でした.
 レーザー加工機自体はWindowsのプリンターとして動作しますので,Draw系のソフトで,スキャナから読み込んだ文様をベクター化し,プリントアウトするだけで簡単に再現できてしまいます.本来は職人の刃物の動かし方や力加減などを計測・記録し,そのスキルをデジタル化したものを用いてロボットにより再現するのが正しいスキルのデジタル化なのですが...
 なかなか工学的にも面白いネタを含んでいるのですが,いかんせん,他にも仕事が色々とあるので3年くらいでこの授業も無くなってしまいました(レーザー加工機はアクリル板加工に大活躍しています^^;).伝統工芸士が活躍しているうちに,技能をデジタル化して保存したいのですけれども.

 どなたか興味のある方,いらっしゃいませんかね.
(三重大にはLED光源と伊勢形紙を組み合わせた商品開発に取り組まれている先生が居ますね)

Re: 伊勢型紙(形紙)

すばらしい研究ネタをどうもありがとうございます。
芸術方面と情報科学との接点が見つけられればと思っていろいろ考えているのですが,なかなか興味を持つ学生がいません。
別の学部でもかまいませんので,こういうことに興味を持つ学生さんはいませんか? せっかく三重県に白井先生がいらっしゃるのですから。
もっとも,私の研究室にはレーザー加工機はありません。

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