円周率は3?

学習指導要領案:40年ぶり授業増 「3.14」完全復活(毎日)。

「ゆとり教育」で円周率が3になったと思っている人は,Wikipediaの円周率は3を読んでみるといい。私も調べてみた。昭和52年度の学習指導要領(昭和55年度から施行)では

円周率としては3.14を用いる。

となっていたものが,「ゆとり教育」の一つ前の平成元年度(平成4年度から施行)ですでに

円周率としては3.14を用いるが、目的に応じて3を用いて処理できるよう配慮する必要がある。

と改められた。概算のとき3を用いるのは当然である。現行の平成10年度(14年度から施行)のものも,これを踏襲して

円周率としては3.14を用いるが,目的に応じて3を用いて処理できるよう配慮するものとする。

としている。ところがこの「3」という数字だけが一人歩きし始めて,ゆとり教育で円周率は3になったというデマが流れた。本日から文科省のサイトに掲載されている新しい学習指導要領では,誤解を避けるために

円周率は3.14を用いるものとする。

に戻された。しかしこれでは概算でも3.14を強いることにならないか。

概算で3というのは

概算で3というのは円は大体6角形って言ってるのと同じでちょっと乱暴すぎる気がしませんか。
私のころはπは大体 355/113 って教わった気がします。

掛け算桁数制限と「円周率は3」問題

釈迦に説法のそしりを恐れずコメントします.

「目的に応じて3を」の記述は,単に「概算で使う」というだけでなく,小学校で教える筆算による掛け算の桁数の制限とも関わっていることに注意が必要かと思います.
「円周率は3になった」がデマであることには同意します.しかし,その一方で,「掛け算桁数制限によって筆算で3.14を使うことができず,『目的に応じて3を』を(意図して概算するのではないのに)適用せざるを得ない.それでは3.14を教えることの意義が薄れる.不合理な掛け算桁数制限を是正することで,3.14を教えることがより実質的な意味を持つようにすべきだ」という批判は(賛否はともかく)意味を持つと思いますが,いかがでしょうか.

「概算でも3.14」については,第4学年の「A 数と計算 > (2)概数について… > ウ 目的に応じて四則計算の見積りをすること」が適切に運用されれば回避されるのではないでしょうか.
「目的に応じて3を」は,概算のために積極的に使うためではなく,掛け算桁数制限との辻褄合わせで苦し紛れに導入したものだと,私は理解しています.

Re: 掛け算桁数制限と「円周率は3」問題

ありがとうございます。乗算の桁数制限との辻褄合わせということですが,平成元年時点でこうなったということとの関連ではどうでしょうか。
確かに概数の項目が適切に運用されれば問題ないですね。

「ゆとり教育で円周率は3」の真相

S52/H1/H10/H20指導要領を読み比べて,興味深いことを発見しました.
(a) 小3での乗算筆算の桁数
(b) 小4「2 内容 > A 数と計算」での整数の乗算の扱い
(c) (b)に関する「3 内容の取扱い」での言及
この3点に着目して比較します.

【S52】
(a) 3桁×2桁
(b) 「整数の乗法についての計算が一層確実にできるようにする」
(c) 「乗数や除数が3位数の場合の指導については,2位数までの考え方を基にして児童に考えさせるような指導を行う必要がある」

【H1】
(a) 3桁×2桁
(b) 「整数の乗法の計算が一層確実にできるようにし、それを用いる能力を伸ばす」
(c) 「乗数や除数が3位数である場合の指導は、2位数までの考え方を基にして児童に考え出させるようにするとともに、複雑な計算を避けるものとする」

【H10】
(a) 3桁×1桁,2桁×2桁
(b) 項目なし
(c) 項目なし

【H20】
(a) 3桁×2桁
(b) 項目なし
(c) 項目なし

私が注目するのはH1の「複雑な計算を避ける」です.つまり,H1の時点ですでに「3桁の乗算は教えたくない」が本音で,「目的に応じて3を」は「複雑な計算」すなわち3桁の乗算を回避する意図で導入された,というのが私の邪推です.
H20で「目的に応じて3を」を削除しておきながら(b)(c)を復活させなかったのは,いかにも世論対策という感じですね.

概数と積の概算は一貫して指導要領に入っているので,「目的に応じて3を」は概算のために導入されたというWikipedia説(奥村説?)には疑問が残ります.

「ゆとり教育で円周率は3になった」は確かに極論に過ぎますが,しかしながら,マスコミの表面的な論調だけを見てデマと切り捨てるのでなく,
-- 「ゆとり教育」のレッテルはH10指導要領だけを指すわけでなく,H10以前から続いていた授業時間削減と学力低下傾向をも含めて用いられることがある(それゆえH1指導要領を含むこともありうる)
-- H10指導要領で乗算桁数制限が厳しくなって「3を使わざるを得ない」場面が増えたため,3.14を教える意義が薄れて結果的に「円周率は3」に近い状況が生じてしまった
という観察までも含めて,「ゆとり教育で円周率は3」の真相を考える必要があると思います.

Re: 「ゆとり教育で円周率は3」の真相

円周率を3と教えるわけでなく,3を使うのは概算で,なぜ概算するかというと有効桁数を教えたいというよりも複雑な筆算を避けたいという意図があったということは,その通りだろうと思います。

余計なことをしすぎ

余計なことをしすぎてる印象というか・・・
あまりに子供と現場を馬鹿にしてる印象があります.

私が小学校の頃は,
3.14で何もかも計算してましたし,
面倒で仕方がなかったですが,
そのうち計算できるようになりましたし,
友達と答えあわせするときだって,
面倒だから3でやってみて
あまりに遠い数字だったら
どっかで計算間違いしてるだろとか,
「大雑把に計算してみる」程度の意味の概算は
平気でみんなやってたの覚えてますよ.

そのうち問題の中の数字をみて
これ円周率絶対でてくるとかって裏読みが
はやったりしました.
``157''とか``628'',``942''ですね(^^;;

桁数の多い計算も,教科書には少しの桁しかなくても
みんな,「同じ規則」で細かい桁の計算してましたし,
理科の実験の数字なんかでも
有効数字なんか無視して
やたら細かい計算してたものです.

計算練習と漢字練習は小学校のうちに,
詰め込みとそしられようが,
山ほどしておくべきだと思います.

ある中学校の先生が以前いってました.
「あの役所がなんかいう度に
状況がかならず悪くなる」って.

age

上げておきます。

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