行動分析学と統計的な考え方

杉山尚子『行動分析学入門――ヒトの行動の思いがけない理由』(集英社新書,2005年)p.138〜,フィッシャーの数理統計学のおかげで「複数の人を集めてグループを作り、その平均値をとれば、たまたま起こった偶然の予期しない要因も相殺されるから、1人を対象にした研究では保証しえない結果の普遍性が得られると考えたのである」とし,統計学を用いる方法は統制群を置くので倫理的な問題を起こすといった批判が書いてあるように読める。

実際は,フィッシャーが統計的仮説検定の説明に使った紅茶の味の実験は被験者が一人である。1回の測定では誤差がわからないので何回か測定し,誤差と効果を比較しないと,効果があるかどうかは言えないというのが統計的な考え方だ。これは行動分析学でも物理学でも同じはずだ。