STIXフォント

1997年に発足した STIX Fonts Project がこのたびやっとSTIX Fontsベータ版を出した。 STIXはScientific and Technical Information Exchangeの略で,米国数学会AMS,物理学会APS・AIP,化学会ACS,電気電子学会IEEE,出版社Elsevierというそうそうたるメンバーの共同事業である。 なんでこんなに時間がかかったの? TeXやMathematicaのフォントでいいじゃん? という批判が聞こえそうなので, TUGboat 28:3 に掲載されたBarbara Beetonの The STIX Project — From Unicode to fonts(要購読)を参考にして,まとめておく。

STIXプロジェクトが始まった1997年時点では,Unicodeだけで数式を記述するのは難しかった。 記号は不足しているし,文字の収録についても,数式を書く側とUnicode Technical Committee(UTC)側の考え方に相違があった。 例えば H=∫dτ(εE2+μH2) で左辺のHはスクリプト体で書いてハミルトニアンを意味し,右辺のHは通常のイタリック体で磁場を意味する。 物理学者にとってはまったくの別物であるが,UTCは,これらは同じHで書体が違うだけなので,独立にコード点を与えるべきでないと考えた。 根気よく両者の考え方をすり合わせて,数学記号や「書体」の違う数式文字(Character Names Index の Mathematical で始まる諸表参照)にコード点を与える作業を経て,実際に数式組版に使えるフォントもようやくベータ版ができあがった。 LaTeXで使えるようにする作業ももうすぐ完成するようである。

詳細は UTR #25: Unicode Support for Mathematics 参照。