Wikipedia の記述に関して(ご意見歓迎)

Wikipedia の記述に関して(ご意見歓迎)

- 上田 完 の投稿
返信数: 4
技術的な話ではないのですが、ここを利用されている方々の声を聞きたいと思い、
トピックを追加させていただきます。

某超大型掲示板:

に書かれていて知ったのですが、Wikipedia 日本語版の「論文」に関するエントリ:

中、以下のような記述があります。

   LaTeXは、博士論文を出版しようとした場合に欠点がある。原稿が完璧であれば、
  もっとも安価な方法であるが、出版するとなると実際には、出版物に合わせた
  表記の統一、体裁の変更、内容の改稿が必要になることがほとんどだが、それを
  印刷所内部の作業者に行わせることになり、通常の印刷用の組版ソフトよりも
  作業が大変であるために、DTPソフトなどよりも作業料金が高額になってしまう
  からである。最後まで執筆した著者が訂正すれば、安価ではあるが、著者には
  著者のやるべきことがあると考えると不合理である。

一応、経験者の端くれとして書くと、僕の場合は、もし LaTeX がなかったら
印刷できなかったかもしれません。欧米(ドイツとか)や文系の一部の分野
の場合で、販売書籍の体裁で出版する場合は、相手の環境によってあるいは
こういうことがあるのか、どうなのか……分かりませんけれど。Wikipedia
のアカウント利用者として、上記箇所の書き換えを行いたいと思うのですが、
これに代わる文案や御見解等ありましたら、ご教示頂ければ幸いです。
上田 完 への返信

Re: Wikipedia の記述に関して(ご意見歓迎)

- 匿 名 の投稿
>通常の印刷用の組版ソフトよりも作業が大変であるために、
>DTPソフトなどよりも作業料金が高額になってしまうからである。
とりあえず,この部分には疑問がありますね.
少なくとも,私がその手の仕事に関わるときには「正当な」
対価は頂いていますが,それでも結局テキストファイルを
いじるだけの話ですからそんなに高額になっているとは思いませんが.

結局,件の記述を書いた人間が故意に LaTeX を貶めようと
しているのでないのならば,
・不適切な(= LaTeX に慣れたスタッフ・外注者を用意できない)
ところに「論文」の出版(というより「印刷物化」)を依頼してしまった
・一般の DTP ソフトを用いているところが「ダンピング」を
しているため「正当な対価」ですら高額に見えてしまった
のどちらかというところなのではないでしょうか.
匿 名 への返信

Re: Wikipedia の記述に関して(ご意見歓迎)

- 露伴 の投稿
匿名さんのおっしゃるとおり結局オペレータの技量に拠るところが大きいでしょう.
私のところでは,純粋な組版原価だけをとってみればインデザインとLaTeXとでは平均を取ればむしろ安いです.

営業に言わせると出版社がTeX原稿を投げてくる場合は大抵,原価を抑えたい目論見が
あるから,特別法外な請求もしていないし出来ないのだと聞きます.
# まぁもちろんあれこれと交渉はしているようですが…

ただ,オペレータの育成から考えるとTeXは他の組版ソフトより育成経費はかかります.
まったくの未経験者をとりあえず一本の仕事を任せられるようになるまでは,
(一般的な組版ルール,出版社ごとのローカルルール,担当編集者の好みの把握まではさておき)
DTPの方が間違いなく早いですし,そういう意味ではTeXでやっと使い物になるまでに掛かった
育成経費を回収すべく高い請求をするところもあるのかも知れません.

また,一定の技量を持ったインデザインのオペレーターは石を投げれば当たりますが,
それと(原価的に)同程度のTeXオペレータとなると相対的に数は少ないと思われます.

そういう事を考えると「TeXは特別である.だから高い請求する(通るかは別にして)」としたくなるところも出てきて,実際にそうしている.ということかも知れません.

上田 完 への返信

Re: Wikipedia の記述に関して(ご意見歓迎)

- 本田 知亮 の投稿
よくも悪くもTeXというのは
旧くて個人向けのシステムなのです.

旧い(あえて「古い」ではなく)というのは
そのインタフェースや設計思想.
ちなみにインデザインの動きが
実はTeXとよく似てるのは
周知の事実だとおもいます.

TeXでよく指摘されるのは
データと構造が一体化されすぎているということです.
仕組みとしてデータと構造の分離が強制されていないので,ある種の「データ作成のお約束」というもので
ある程度の分離をなさなければいけないのです.
そして,プログラミング言語の側面があるので
結果,「俺様データ」を容易に作れてしまうのです.

ですでの,一番怖いのは
中途半端に知ってる人が作った
「ここまで作ったんだからあとは楽でしょ,
楽なんだから勉強してよね」というものです.
性質が悪いことに,
そういうデータは見栄えだけはよいことが多く
介在する編集者にはそれがいかにトホホデータなのか
ということが分かりません.

そういうデータがくるとどうなるかというと
まずデータの解析から始まります.
ぶっちゃけた話
用紙サイズ・文字の大きさ・版面のサイズや位置は
厳密に出版社から指定されるのですが,
トホホの場合それらの解析から始まります.
さらに,こういうときは
つくりこまれた装飾の修正もあったりします.
われわれの場合は
軽微な場合はさっさとやりますが
あまりにひどい場合はいったん報告書を作ります.
報告書を作るのもコストがかかります.
そのコストは当然原価に反映されますし
解析のコスト・修正のコストもかかるわけです.

コストがかかるというWikipediaの文言を書いた人は
トホホを作ったか,TeXニックのない業者を使ったのでしょう.

・・・はっきりいうと
コストがかかる原因ってのは
TeXに限った話ではまーーったくないのです.
トホホを作ることが原因なんですよ.
まあ,TeXがトホホを作りやすいのは否定しません.

ちなみにWord組版ってのがありますが
これはトホホ率もそれなりに
あるとおもいますが安価かもしれません.
けどWord組の場合,それほどの組版品質が
求められないということを忘れてはいけません.

インデザインなんかが安価とおもわれているのは,
例えばWord入稿を前提とし,Word用のプラグインが豊富にあり,またトホホとはいえそれはWordの範囲でのトホホであることを考慮しないで議論するのは無意味でしょう.
インデザインでも
複雑なことをがっちりきちんとしようというなら
当然コストはかかります.

私個人としては
インデザインはいいシステムだとおもいますし,
Mac系の組版もなくてはならないとおもいます.
#というか・・・小学校低学年教科書なんか
#TeXで組めるわけがない・・・
Page2012でも大きくやってましたけど
モリサワのシステムなんかもすごいですよ.
要は,目的に合わせた適切なシステムを選択し,
適切なデータを用意しない限り
何をどうしようと
人にお願いするかぎりコストはかかるんです.
本田 知亮 への返信

Re: Wikipedia の記述に関して(ご意見歓迎)

- 上田 完 の投稿
お三方:
ご意見有り難うございました。

ちなみに、僕の時は、LaTeX で作成・レーザープリンタで出力した 
camera-ready な原稿を印刷所に持ち込んで印刷をお願いしたのですが、
印刷所に細かい修正をさせる、という時間も費用もありませんでした。
ですから、(テキストファイルが扱えれば)どこでも原稿を書けて、
引用文献等のミスを防げ、印刷所サイドでの工数を減らせる
(= 追加費用を払わずに済む)、という LaTeX のメリットなしには、
おそらく印刷はできなかったろうと思います。

# というか、そもそも印刷所で直しをやってもらう、という発想が
# ありませんでしたねえ。その余裕もなかったし。

おそらく、コースドクターの D 論印刷というのは、他の方の場合でも
似たような状況で行われるだろうと思うのですが、先に引用した
Wikipedia の記述に強い違和感を感じたので、ここに質問させていただいた
わけです。

後程、御三方の見解も盛り込んだかたちで該当記述を修正しようと
思います。繰り返しになりますが、どうも有り難うございました。