GitHub の issue
https://github.com/texjporg/jfontmaps/issues/27
で議論している途中ですが,
実現へ向けてかなり現実味を帯びてきたので,当フォーラムでもお知らせします。
現在,TeX Live の規定では dvipdfmx / dvips で埋め込まれるのは「IPAex フォント」ですが,
これを「原ノ味フォント」に変えたい,という議論があります。
※「原ノ味フォント」は,Adobe-Identity-0 という特殊な形式の SourceHan (源ノフォント) あるいは Noto を
伝統的な日本語フォントが準拠する Adobe-Japan1 に組み直した OpenType フォントです。
https://ctan.org/pkg/haranoaji
主なメリット(恣意的に選びました):
(1) SourceHan / Noto はマルチウェイトでありながら AI0 故に使いづらいケースが多かったが,
HaranoAji は AJ1 なので扱いやすく,OTF パッケージの機能をよりよくサポートできる。
(2) macOS ユーザから「IPAex → ヒラギノに変えるための設定がわからない」という FAQ があったが,
最初から「原ノ味」ならその必要が激減すると期待。
懸念点などは冒頭にリンクした GitHub で(気づいた順に断続的に)挙がってきていますが,
もし抜け漏れにお気付きの方がいらっしゃいましたら一報ください。
本日の TeX Live 2020 pretest から,
dvipdfmx / dvips での日本語フォント埋込の既定値が
「IPAex フォント」から「原ノ味フォント」に変更されました。
(r54473, r54495)
実際にこれが pretest ご利用の皆様のお手許に届くのは
「texlive.infra パッケージが更新される時」
なので,少し遅くなりますが…。
以下,GitHub の長い議論で出てきたことの要点をまとめます。
[1] updmap (kanji-config-updmap-sys) の設定値について
従来の既定値は
jaEmbed="ipaex", jaVariant=""
でしたが,新しい既定値は
jaEmbed="haranoaji", jaVariant="-04"
になりました。これは
$ kanji-config-updmap-sys --jis2004 haranoaji
を実行した状態に相当します。明示的に "-04" が指定されていますが,これは
従来の IPAex が JIS2004 字形だったことを加味して決定されました。
[2] OTF パッケージ
原ノ味フォントは OpenType 形式ですので,
従来の IPAex では出来なかった機能のサポートが改善します。
(JIS90/2004 字形の切替,明朝の太字・ゴシックの太字を含む多書体化,etc.)
[3] 組版結果について
最新の原ノ味フォントでは,
Adobe-Japan1 で全角幅のグリフは全角幅でデザインされています。
したがって,昔話題になった
「Windows の游でクオート記号が全角幅でないためにずれる」
https://okumuralab.org/tex/mod/forum/discuss.php?d=2017
のような問題は起きません。
なお,従来の IPAex でも「一部のグリフが全角幅でない」という問題がありました
https://zrbabbler.hatenablog.com/entry/20120629/1340994194
ので,その点も含めて原ノ味フォントでは状況改善されたといえます。
[4] Ghostscript の設定
dvipdfmx をお使いの場合は,今までどおり特別な作業は必要ありません。
dvips の場合はその後に Ghostscript を使うと思いますので,下記を参照してください。
[4-1] macOS / Linux など Windows 以外の場合
従来どおり,「Ghostscript で日本語フォントを使えるようにする設定作業」が必要です。
具体的には,cjk-gs-integrate スクリプトを実行すれば OK ですが,
最新のバージョン 20200307.0 以降を使うようにしてください。
$ sudo cjk-gs-integrate --link-texmf --force
(注) pTeX/upTeX 用のマップで使われる CMap のうち 2004-H, 2004-V は gs に
同梱されていないのですが,最新の cjk-gs-integrate はこれらを自動的にインストールします。
[4-2] Windows の場合
特別な作業は不要です。
(注) install-tl の実行の最後,あるいは tlmgr が haranoaji パッケージを
インストール又は更新した後のいずれかのタイミングで,
「TeX Live 内蔵 gs (tlgs) で原ノ味フォントを使えるようにする設定」
が自動実行されるためです。
dvipdfmx / dvips での日本語フォント埋込の既定値が
「IPAex フォント」から「原ノ味フォント」に変更されました。
(r54473, r54495)
実際にこれが pretest ご利用の皆様のお手許に届くのは
「texlive.infra パッケージが更新される時」
なので,少し遅くなりますが…。
以下,GitHub の長い議論で出てきたことの要点をまとめます。
[1] updmap (kanji-config-updmap-sys) の設定値について
従来の既定値は
jaEmbed="ipaex", jaVariant=""
でしたが,新しい既定値は
jaEmbed="haranoaji", jaVariant="-04"
になりました。これは
$ kanji-config-updmap-sys --jis2004 haranoaji
を実行した状態に相当します。明示的に "-04" が指定されていますが,これは
従来の IPAex が JIS2004 字形だったことを加味して決定されました。
[2] OTF パッケージ
原ノ味フォントは OpenType 形式ですので,
従来の IPAex では出来なかった機能のサポートが改善します。
(JIS90/2004 字形の切替,明朝の太字・ゴシックの太字を含む多書体化,etc.)
[3] 組版結果について
最新の原ノ味フォントでは,
Adobe-Japan1 で全角幅のグリフは全角幅でデザインされています。
したがって,昔話題になった
「Windows の游でクオート記号が全角幅でないためにずれる」
https://okumuralab.org/tex/mod/forum/discuss.php?d=2017
のような問題は起きません。
なお,従来の IPAex でも「一部のグリフが全角幅でない」という問題がありました
https://zrbabbler.hatenablog.com/entry/20120629/1340994194
ので,その点も含めて原ノ味フォントでは状況改善されたといえます。
[4] Ghostscript の設定
dvipdfmx をお使いの場合は,今までどおり特別な作業は必要ありません。
dvips の場合はその後に Ghostscript を使うと思いますので,下記を参照してください。
[4-1] macOS / Linux など Windows 以外の場合
従来どおり,「Ghostscript で日本語フォントを使えるようにする設定作業」が必要です。
具体的には,cjk-gs-integrate スクリプトを実行すれば OK ですが,
最新のバージョン 20200307.0 以降を使うようにしてください。
$ sudo cjk-gs-integrate --link-texmf --force
(注) pTeX/upTeX 用のマップで使われる CMap のうち 2004-H, 2004-V は gs に
同梱されていないのですが,最新の cjk-gs-integrate はこれらを自動的にインストールします。
[4-2] Windows の場合
特別な作業は不要です。
(注) install-tl の実行の最後,あるいは tlmgr が haranoaji パッケージを
インストール又は更新した後のいずれかのタイミングで,
「TeX Live 内蔵 gs (tlgs) で原ノ味フォントを使えるようにする設定」
が自動実行されるためです。