はじめまして。
投稿の仕方がよく分からないのですが、TeXソースで
書いてみました。ご意見があれば、返信お願いします。
野口 真康
\documentclass{jsarticle}
\usepackage{amsmath,amsfonts}
\usepackage[T1]{fontenc}
\usepackage{textcomp}
\usepackage{otf}
\usepackage{pifont}
\usepackage{graphicx}
\usepackage{bm}
\usepackage{mathabx}
\begin{document}
\newcommand{\dif}[1]{\, \mathrm{d}#1}
\newcommand{\exveke}[1]{#1_{\bm{\to }}}
\newcommand{\exvekn}[1]{#1_{\bm{\uparrow }}}
\newcommand{\exveksw}[1]{#1_{\bm{\swarrow }}}
\newcommand{\exvekne}[1]{#1_{\bm{\nearrow }}}
\newcommand{\exvekang}[1]{#1_{\bm{\measuredangle }}}
\Large
\textbf{ISOと数式の表記}
\normalsize
\LaTeX で,ISOやJISに合うような文字遣いをしてみました。積分記号は,\texttt{mathabx} パッケージを
プリアンブルに記載していることにより,立ってしまっています。微分の
$\mathrm{d}$ は,\LaTeX のデフォルトでは,Knuth の考えにより斜体になっていますから,
$\displaystyle \int_{\infty}^{r} f(x) d x $
となります。これをISOやJISに従い,立体の $\mathrm{d}$ にすると,
$\displaystyle \int_{\infty}^{r} f(x) \mathrm{d} x $
となります。
ここで,閉じ括弧と$\mathrm{d}$ の間を少し空けると,
$\displaystyle \int_{\infty}^{r}f(x) \dif x $
となり,これがいちばん見やすいと思います。そのうえ $\mathrm{d}$ と$x$ の間を空けると,
$\displaystyle \int_{\infty}^{r}f(x) \, \mathrm{d}\,x $
となって,見栄えが悪くなります。無限大の$\infty$は,\texttt{mathabx}フォントでは線が細くなってしまい,改善が求められます。
差分(この用語が数学的に適切かはわかりませんが,
JISでの表現に従います)のデルタは,ISOで立体ですが,これを\LaTeX でデフォルトで出すと,
$\displaystyle \frac{\Delta y}{ \Delta x}$
(高木『解析概論』のデルタも,立体)。
従来の高等学校の数学・物理の教科書にあった,
縦長で斜体のデルタは,\LaTeX のデフォルトでは出せません。
そこで \texttt{amsfonts} を遣うと,正三角形に近いデルタを少し傾けるだけになってしまいます(
$\displaystyle \frac{\varDelta y} { \varDelta x} $)
。
これを,\texttt{graphicx} で横を0.8倍にすると,
$\displaystyle \frac{\scalebox{0.8}[1]{$\varDelta$} y}
{\scalebox{0.8}[1]{$\varDelta$} x} $
となり,従来のものに近いかと思われます。
0.6倍では,$\displaystyle \frac{\scalebox{0.6}[1]{$\varDelta$} y}
{\scalebox{0.6}[1]{$\varDelta$} x} $
で,あまり傾いて見えません。
斜体でないデルタの横を0.6倍してみると,
$\displaystyle \frac{\scalebox{0.6}[1]{$\Delta$} y}
{\scalebox{0.6}[1]{$\Delta$} x} $
となり,ISOに最も近いと思われます。差分のデルタを遣うならば,
上に示したものから好みのものを選ぶと良いでしょう。
微分の定義で,
\[f'(x) = \lim_{h \to 0}\frac{f(x+h) - f(x)}{h}\]
とすれば,デルタを遣わずにすみます。リーマン積分の定義で,
「細分」にデルタを遣うことがあります。この場合は,
ISOの遣いかたとは異なるため,斜体であるべきでしょう。
従来の差分のデルタが縦長の斜体であったのは,
小さいものであることを視覚的に示すためにくさびを模し,
どんどん小さくしてゆく,
つまり変化させるものであるという含意のために斜体,
というように解釈していました。
とくに\LaTeX のデフォルトの(立体も斜体も)正三角形に近い,
大きく見えるデルタは,小さいものであるというニュアンスから
外れているように感じられます。
ISOでも,微分などのプライムは,斜めのままです。
わざわざ立てる必要はありません。
\texttt{mathabx}のデフォルト(CMフォントと同じ)で示します。
$f(x)$,$f'(x)$,$f''(x)$,$f'''(x)$
で,ISOと同様です。
\texttt{ f'(x)},\texttt{f''(x)},\texttt{f'''(x)}とインプットすれば可です。\texttt{\textbackslash prime}などでなくても良い。
\texttt{mathabx}パッケージでの偏微分記号は,
$\displaystyle \frac{\partial y}{\partial x}$
ですが,\texttt{Pisymbol} を遣えば,
$\displaystyle \nabla = \frac{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}}{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}x}\mathbf{i} + \frac{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}}{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}y}\mathbf{j} + \frac{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}}{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}z}\mathbf{k}$
と書けます。これもどうしても完全に立っているとは言えないようです。
偏微分記号はドイツ文字に由来するとして,$\displaystyle \frac{\mathfrak{d}y}{\mathfrak{d}x} $としてみると,ドイツ文字が太すぎます。
Knuthは,ベクトルを太字ではなく上矢印で表すことを推奨しているようです。
CMフォントで,太字が太字に見えないものがあるようです。
\[ \nabla \equiv \frac{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}}{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}x}\vec{\text{\i}} + \frac{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}}{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}y}\vec{\text{\j}} + \frac{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}}{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}z}\vec{\text{k}}
\]
\begin{equation}
\begin{split}
\triangle \equiv \nabla^2 &= \frac{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}^2}{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}x^2}\mathbf{i} + \frac{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}^2}{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}y^2}\mathbf{j} + \frac{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}^2}{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}z^2}\mathbf{k} \notag \\
&= \frac{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}^2}{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}x^2}\vec{\text{\i}} + \frac{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}^2}{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}y^2}\vec{\text{\j}} + \frac{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}^2}{\text{\Pisymbol{psy}{"B6}}z^2}\vec{\text{k}}
\end{split}
\end{equation}
セリフのない正三角形は,なんだか判らなくなりますから,$\nabla^2$のままでよいように思います。
\[\mathrm{e} \equiv \lim_{t \to \infty}(1 + \frac{1}{t})^t\]
円周率を\texttt{Pisymbol}により立体にしてみると,$\displaystyle \omega = 2 \textrm{\Pisymbol{psy}{"70}} f $
となって,少し太く見えてしまいます。CMフォントのデフォルトでは,
$\displaystyle \omega = 2 \pi f$
のようになりますが,これも立体のパイと見られなくもありません。
\[\text{\Pisymbol{psy}{"6D}} \equiv 10^{-6}\]
\texttt{Pisymbol}ではこうなりますが,\texttt{\textbackslash textmu}として,
\textmu
を出すこともできます。好みの問題でしょう。
物理学で\LaTeX を遣うなら,
数学定数である $\mathrm{e},\ \textrm{\Pisymbol{psy}{"70}},\ \mathrm{i}$ などは立体,微分に関連する \scalebox{0.6}[1]{$\Delta$},
$\mathrm{d},\ \text{\Pisymbol{psy}{"B6}} $ も立体,
積分の$\displaystyle \int $ も立体とするべきでしょう。
ただ,パイについては \textrm{\Pisymbol{psy}{"70}} があまりにも
目障りとあらば,デフォルトの $\pi$ を立体のつもりで円周率にだけ
遣い,変数には遣わない,ということもできます。天文学では
そのためか,変数に $\varpi$ をよく遣うようです(馴染みのない人にはパイと
読めない)。
三次元ベクトル $\overrightarrow{F}$ または $\bm{F}$の成分を
$F_x, F_y, F_z$ と表すのは,ISOでは言及していませんが,
偏微分と紛らわしいからやめるべきだという向きもあります。
これらを,$F_{\mathrm {X}}, F_{\mathrm {Y}},
F_{\mathrm {Z}}$ としましょうか。物理学では添え字で偏微分を表すことは
まれだという議論とは別に,そもそも,$x$-軸という表現は紛らわしいものです。$x\in x$は成り立たないので,
軸の名が$x$であるわけはありません。英語の表記では,``$x$-axis''であって,ハイフンを入れないと$x$を斜体にしても読みづらい。ハイフンを入れることには,それ以上の意味はなく,逆に考えると
$x$が属する軸の名が$x$だと言っていることになり,上に述べた集合論に矛盾します。
日本語での表記上はじつはどちらでもよく,ハイフンを入れないことを推奨する人もいます。
座標軸の考えの成立は,集合論の成立のずっと前,デカルトによります。
従って$x$が属する軸の名を$x$とすることに違和感がないのかもしれません。
$x$-軸という表現は,集合論の原則にかかわらず,慣例として続けられてきたと考えられます。
%集合論的に考えてみると,
%軸は,原点$\mathrm{O}$とともに不動のものとして設定しているから,軸の名は%原点と同様に立体にすべきです。
集合論的な座標系の作り方を示してみましょう。以下では,固定する点を立体で,
変動する点を斜体で示します。幾何学上の三次元空間に,原点$\mathbf{O}$を任意にとります。$\mathbf{O}$を通る互いに垂直な三本の直線を,任意にとります。右手系とするならば、三本の直線に右手の母指・示指・中指を任意に当て,それぞれの先(または手前)
に点$\mathbf{X},\,\mathbf{Y},\,\mathbf{Z}$を,$\overline{\mathbf{OX}} = \overline{\mathbf{OY}} =\overline{\mathbf{OZ}}$
となるようにとり,
半直線$\overrightarrow{\mathbf{OX}},\,\overrightarrow{\mathbf{OY}},\,\overrightarrow{\mathbf{OZ}}$を定めます。その等しい長さを「単位長さ( $= 1$)」と定めます。
半直線$\overrightarrow{\mathbf{OX}}$上の点$X$に,
実数$\displaystyle \overline{\mathbf{O}X}/\overline{\mathbf{OX}}$を対応させます。直線$\overleftrightarrow{\mathbf{OX<br />}}$上の点で,$\overrightarrow{\mathbf{OX}}$上にない点$X$には,
実数$\displaystyle -\overline{\mathbf{O}X}/\overline{\mathbf{OX}}$を対応させます。このようにして,$\overleftrightarrow{\mathbf{OX}}$上の点$X$と,実数$x$との間に全単射が付けられるので,任意の
$X\in \overleftrightarrow{\mathbf{OX}} $と$x$を同一視し,また
$\overleftrightarrow{\mathbf{OX}}$を$\mathbf{X}$軸と呼ぶことにします。
さらに,
$\overleftrightarrow{\mathbf{OY}},\,\overleftrightarrow{\mathbf{OZ}}$上の任意の点$Y,\,Z$に,実数$y,\,z$を与え,
$\overleftrightarrow{\mathbf{OY}},\,\overleftrightarrow{\mathbf{OZ}}$を$\mathbf{Y}$軸および$\mathbf{Z}$軸と呼ぶことにします。
これにより,$x\in \mathbf{X}$,$y\in \mathbf{Y}$,$z\in \mathbf{Z}$
と書けることになります。
このようにすれば,座標系$\langle \mathbf{O},\,\mathbf{X},\,\mathbf{Y},\,\mathbf{Z}\rangle$が原点,原点からの座標軸の正の向き,単位長さが反映されるものとなります。
この座標系での点$(x_1,\,y_1,\,z_1)$とは,
$x = x_1$を通り$\mathbf{X}$軸($\overleftrightarrow{\mathbf{OX}}$)に垂直な平面,
$y = y_1$を通り$\mathbf{Y}$軸($\overleftrightarrow{\mathbf{OY}}$)に垂直な平面および
$z = z_1$を通り$\mathbf{Z}$軸($\overleftrightarrow{\mathbf{OZ}}$)に垂直な平面の交点です。
このように考えると,$\mathbf{X}$軸,$\mathbf{Y}$軸,
$\mathbf{Z}$軸を$x$-軸,$y$-軸,$z$-軸などと呼ぶのは,
集合論に基づかない慣例であることが分かるでしょう。
ここでの書体と上バーの選択は,
紛らわしさの回避のためであり,これらを推奨するものではありません。
同様に,極座標での動径向き成分と方位角向きの成分は,
$F_r, F_{\theta}$ でなく,$F_{\mathrm{r}}
, F_{\mathrm{a}}$
とでもしましょうか。変数ではなく,説明の意味での radial と angular と考え,
立体で示します。
だいたい,変数文字を遣って,成分の向きを示すことがヘンです。
矢印などを遣って,$\exveksw{F}$,
$\exveke{F}$,$\exvekn{F}$,
$\exvekne{F}$(動径向き),$\exvekang{F}$(方位角向き)などと
できるでしょうか。見栄えは,よくありません。
接線向きと法線向きのベクトルの成分は,速度$\overrightarrow{v}$を例にとると,
$v_{\mathrm t},\,v_{\mathrm n}$
と書けば良いです。
tangent, normal
という説明を添え字にしたものです。たとえば$v_t$とすると,速さを時間の変数で偏微分したことになります。
そう考えると,$v_t,\,v_n$は間違いになります。
二乗して$2$になる数は二つありますが,実数論で大小が決まり,明確に区別できます。
二乗して$-1$になる数も,二つあります。そのどちらを遣っても,抽象的な複素数論は構築できます。
$\sqrt{-1}$は,そのどちらでしょうか。いわゆるガウス平面(これは日本でしか通じない?)で
$(0,1)$の位置でしょうか。しかし,そこを$\sqrt{-1}$と決めても,$i = -\sqrt{-1}$として
複素数を論ずることができます。この場合,$i$ による回転の向きが,普通の象限のとり方と逆(つまり右ネジを回す向き)になります。
ガウス平面で左回りが正,$\mathrm{i} \equiv \sqrt{-1} \equiv(0, 1)$ などとするのは,世の中の統制のためで,「車は左」と同じことです。
\end{document}