[2002-12-23] Acacia: In 1991, the U.S. Patent and Trademark Office issued a pioneering patent covering the transmission and receipt of digital audio and/or video content. This technology, known as Digital Media Transmission ("DMT") Technology, is in wide use today and is protected by 5 U.S. Patents and 16 International Patents owned by Acacia. ストリーミングサイト等を脅して金を集めるつもり?
[2002-09-06] オークション特許で eBay 危機
[2002-09-05] Slashdot で Making the Case Against Software Patents? という議論が進行中。
JPEG 特許は 別ページ に移しました。
人工無能の特許?! ActiveBuddy's Patent Win Riles IM Bot Developers (020815 internetnews.com)
今野浩『特許ビジネスはどこへ行くのか――IT社会の落とし穴』(岩波,2002年,1600円)
≪何でも特許≫がIT社会を自滅させる! いったい誰が何を企んでいるのか。
Cマガジン1998年10月号52-62ページの拙稿「データ圧縮アルゴリズム」 でデータ圧縮関連の特許について書いたところ,大きな反響がありました。
この記事には不備な点がいくつかありましたので, 追加情報をインターネットで公開したところ, 大勢の方に読んでいただきました。 しかし,部分的な記述だったので,元記事の意図とは逆に, フリーの圧縮ソフトは特許に抵触すると早合点されてしまう方もありました。
不正確な情報も出回るようになりました。 たとえば「日経パソコン」1999年3月8日号の195ページと297ページには, 圧縮・解凍ソフトには特許・著作権の問題が絡む(★1), LZ77という圧縮法の特許を米スタック社が持つ(★2), フリーの圧縮・解凍ソフトは今後減ってくるかもしれないと書かれています。
★1 圧縮ソフトで問題があるとすれば,著作権ではなく,特許に関してです。 著作権の問題といえば剽窃(盗用)を指しますので,これはフリーソフトの作者に対してちょっと失礼な言い方ではないかと思います。 一方,特許については,たとえ特許の存在を知らずに独立に同じ方法を考案して使っても侵害になります。
★2 LZ77という圧縮法の特許をスタック社が持つというのも正しくなく,スタック社が持つのはLZ77の圧縮を高速化するために「ハッシュ」という方法を使うことに関してだけです。 ハッシュ自体は文字列の検索を高速化するための常套手段で,あらゆる場面で使われ,特許になっていません。 スタック社が持つ特許は,LZ77とハッシュを組み合わせたある方法に関するものです。 LHA,Zip,gzip,zlib,PNG等もLZ77とハッシュを使っていますが,スタック社の特許とは別の方法ですので,問題はない,というのがわれわれの見解です。 また,ハッシュを使うのは圧縮時だけですから,LHA等の伸張(解凍)についてはスタック社の特許の問題はありません。 ちなみに,スタック社(Stac Electronics → Stac Software)は2000年4月25日に Previo という会社になっていました。
このような誤解を正すために,データ圧縮と特許の問題について, 私の知り得る限りの情報を公開しておきたいという意図で, このページを書き始めました。
なお,私は法律の専門家ではありませんので,記述には間違いがあるかもしれません。 おかしなところがありましたらお知らせいただければ幸いです。
[補記] 私はStacがMicrosoftのDoubleSpaceを特許侵害で訴えたときの根拠として米国特許 5,016,009 だけを挙げましたが,4,701,745 も根拠に含まれていたとのことです (Thanks: 匿名様)
おそらく日経パソコンが根拠としたのは富士通・富士通金融システムズの「縮丸 -特許/著作権」というページ(★3)で,ここには
データ圧縮ソフトの国内分野ではフリーソフトウェアのLHAが有名ですが、LHAは特許/著作権問題が有り、富士通では原則として、LHAをユーザシステムに組み込む事は禁止しています。
と書かれていました(赤の部分は原文も赤になっていました)。
★3 富士通金融システムズは合併により 富士通アドバンストソリューションズ になりました。 縮丸 のページも移動していますが,文面は若干異なっています。 また,富士通の ●インフォメーション●4. データ圧縮を利用したインストーラ… には「データ圧縮ツールは、フリーソフトウェア(LHA)がパソコン通信の世界で広く普及していますが、圧縮アルゴリズムに関する特許や著作権などの第三者からの権利侵害の問題や保守・サポート面が企業での使用の不安材料となっています。」と書かれています。
LHA の「著作権問題」については上述の通りです。 また,LHA だけが槍玉に上がっていますが, ほぼ同じ圧縮法を使っている Zip や gzip について何も書いてないのは不思議です (おそらくこのページの最初のバージョンが書かれた当時は LHA 全盛のころだったのでしょう)。 富士通では LHA,Zip,gzip 等のフリーソフト全般の利用を禁止されているのだと思います(★4)。
★4 がんばれ!!ゲイツ君 No. 124 夢のフォーマットのその後 に富士通では Zip,gzip も禁止されていると書かれていました(Thanks: 益山さん)。
現在の法律では,著作権は届け出を必要とせず,著作をした時点で発生します。 また,仮に同じ内容の著作を偶然に作ってしまったとしても,著作権の侵害にはなりません。
これに対して,特許は出願して審査に通らなければなりません。 また,たまたま特許の存在を知らずに独立に同じ方法を考案して使っても,侵害になります。 さらに,米国では申請された特許が必ずしも公開されるわけではなく,しかも申請時に遡って権利が与えられるので,サブマリン(潜水艦)特許といって,突然浮上した特許で何年も遡ってライセンス料を取られることがあります。
特許はいったん訴えられたら,裁判にかかる費用や時間が膨大なものになるので,たとえ侵害の事実がないくても,要求されたお金を払ってしまうことがかなりあるようです。
アルゴリズムとは,たとえばデータ圧縮の方法や,線形計画法の解法などを指します。 自明でない最古のアルゴリズムとして,最大公約数を求めるユークリッドの互除法が有名です。
昔はアルゴリズムに特許は取れないとされていました。 しかし,カーマーカーという人が線形計画法のアルゴリズムで特許を取ったのをはじめとして,最近では多数のアルゴリズムに特許が成立しています。 データ圧縮に関するものだけでも数千件の特許があります。
Patent and Trademark Office で1976年以降の米国特許が検索できますので,data compression で検索したところ,1999年2月19日の時点で 5947 件ヒットしました。
IBM Intellectual Property Network でも同様な検索ができますので,やってみてください (ここは Delphion Intellectual Property Network に変わって有料になりました)。
他に,日本の 特許庁ホームページ でも検索ができますし,欧州の European Patent Office では日本を含む各国の特許が検索できます。
アルゴリズム上の工夫を含んだ作品を公表する際に,これだけの特許と付き合わせて調べることは,特許の専門家を擁する企業以外には難しくなっています。 ソフトウェア特許推進派は,特許が産業を活性化させると主張しますが,これは裏を返せば金儲けのじゃまになるフリーソフトを撲滅できるという意味でもあります。
アルゴリズムの神様といわれる Knuth は TeX というフリーソフトの作者でもありますが, Patent Office に手紙 を書いて,アルゴリズム特許の廃止を訴えています。
gzip,Zip,zlib(これらは同じアルゴリズムを使っています)は性能より特許的に安全であることに留意して書かれています。 Jean-loup Gailly は次のように書いています。
I estimate that I have now spent more time studying data compression patents than actually implementing data compression algorithms. I have a partial list of 318 data compression patents, even though for the moment I restrict myself mostly to lossless algorithms (ignoring most image compression patents). Richard Stallman has been *extremely* careful before accepting gzip as the GNU compressor.
zlib は Java の標準圧縮形式としても使われています。
zlib 1.1.3 までに セキュリティ上の問題 が発見されました(1.1.4 で修正されています)。 この影響範囲は zlib Home Site でも公開されていますが,オープンソースソフトウェアだけでなく,Microsoft 製の Windows のコンポーネントにも多数の影響が及んでいます。 ……ということは,Microsoft も zlib をいっぱい使っているんだ。
最近,匿名の弁理士のかたから長いメールを何通もいただき,gzip/zlib が 4,701,745 特許を侵害していないとする上記 Jean-loup の主張 には難があるという意見を私のページに掲載してほしいと依頼を受けました。 ……ということを書くこと自体,フリーソフト作者を萎縮させる一定の効果があるかもしれず,アルゴリズム特許賛成派側の思うつぼかもしれませんが,昨今の状況を考えれば gzip/zlib が次の標的とならないとも限らず,不穏な雰囲気を感じます。
実際,GIF も MP3 も,後戻りができないほど普及した後で「金を出せ」と脅されました。
有名なフリーの描画ソフト D-Pixed(ここ→ソフトウェア→D-Pixed) を初め,多数のフリーソフトが GIF 対応をやめました。
2000年の オンラインソフトウェア大賞 に輝いた高速 MP3 エンコーダ 午後のこ〜だ も,ソースコードをひっそり配布するだけになってしまいました……と思ったら,
2000年の オンラインソフトウェア大賞 に輝きながら特許がらみで配布停止していた 午後のこ〜だ のバイナリ配布が再開されました (2002年4月1日の窓の杜ニュース)。
このあたりの雑感のようなものは,特に価値がないので, いろいろ 2002-04-05 のほうに書きました。
(追記)現在はインストール時にソースからコンパイルされるようになっているようです。
書きたいことがたくさんあるのですが,時間がありません。
カーマーカー特許関連(日本特許第2033073)
Last modified: 2005-10-07 17:38:24