JPEG特許問題

Last modified: 2006-11-03 11:16:17

発端

Forgent Networks という会社が JPEG の特許を主張 (Thanks: matsuda さん [sscience-comp:263])

ソニーは 騙されて 1500万ドルも払ったそうだ(そのうち1000万ドルは Forgent の弁護士に渡ったという噂も)。 これ によれば6月10日となっている。 572億円の当期黒字を出したソニー にとって20億円程度の損失は誤差範囲であろうか。

Suddenly a JPEG Patent and Licensing Fee (Slashdot) の投稿によれば,Compression Labs は初期からの JPEG のメンバーであった。 この特許を出願したことは黙っていて,登録された時点で委員会に通知した。 これは委員会の方針とは相容れないことであり,委員会での話し合いを参考にして特許を書いた可能性もあるというので,たいへん気まずい雰囲気になった。 Compression Labs はこの特許を JPEG に対して使用しないと言ったが,その後出席しなくなった。

特許

どうやらランレングス符号化の一形態らしい。 誰でも考え付きそうなことなので JPEG 以外にも問題になるかも。

Forgent は1997年にCompression Labsを傘下に収めた際にこの特許を得た。 1987-10-06 に特許されたので,旧特許法により,その17年後の2004年10月まで有効。 ヨーロッパ(独仏英伊)では1987年9月18日出願,1994年3月9日登録。

特許については次のサイトで無料で調べられる。

2002年7月20日以降

この最後の記事に書かれているように,問題の特許は MPEG LAMPEG-2関連特許リスト にも含まれているが特許所有者は General Instrument Corporation (2000年1月より Motorola Broadband Communications Sector) になっている。 この記事では,もしかしたら1996年6月にCLIが事業の一部をGIに売却した際に特許が売られていた可能性があるとされている。 念のため特許番号で検索したところ,Motorola Broadband Communications Sector の HDD200 Series High Definition Decoder に ``Covered under one or more U.S. patents: ... 4698672; ...'' と挙げてあった。 いったい Forgent,Motorola のどちらがこの特許を所有するのであろうか。 [追記] Forgentのページ に Forgent has the sole and exclusive right to use and license all the claims under the '672 patent that implement JPEG in all "fields of use" except in the satellite broadcast business. と書かれているように,satellite broadcast business は Motorola,他は Forgent が権利を持つらしい。

2002年8月

C Magazine 2002年9月号175ページに,慌てて書いた拙稿(編集部で一部補筆)「JPEG特許を考える」が出た。

日経エレクトロニクス 2002年8月12日号26-27ページには「ソニーの次は 波紋広がるJPEG特許問題 まずは米国デジカメ市場 JPEG 2000には関連せず」という記事が。 現状を総括したもので,たいへんうまくまとめられている。

JPEGのJIS規格票はオンラインで閲覧できる(印刷不可)。 日本工業標準調査会 から「JISをご覧になりたい方」→「JIS」とたどって,「JIS規格番号検索」で X4301 と入れればよい。 この最後のほうに「附属書L(参考) 特許」という部分があり,算術符号化などの特許が列挙されているが,ベースラインJPEGには該当しないものである。 ベースラインJPEGはあくまで特許フリーであるとされてきたことに間違いない。

なお,すでに述べたことと一部重複するが,特許関係のかたに調べていただいたところ,問題の米国特許に対応するヨーロッパ特許は EP266049 として成立(指定国:ドイツ,フランス,イギリス,イタリア),存続期間は2007年9月[これについては上に書いたように2004年10月が正しいはず]まで。 日本で特開昭63-148789が1997年1月に拒絶査定された理由については特許庁で書類を廃棄しており不明とのこと。

上の3記事の元ネタは Algo Vision Luratech という会社のトップページからたどれる:

具体的に prior art となりうる4論文が挙げてある。

2002年9月

Patent Islandの会議室 には「特許島民」さんが7月25日の時点でかなり詳しく調べておられた: 特開昭63-148789は平成9.1.14に拒絶査定,不服審判は提起されていないので拒絶は確定。 拒絶査定になったときの公知文献がわかればUS4698672も潰せるかも。

上の日経エレクトロニクス記事は必読。 日本で拒絶査定の根拠となった5件の先行技術が具体的に挙げてある! 具体的な内容は下の [2002-10-01] の掲示板で話題になっている。

2002年10月

2002年11月

やっと JPEG 委員会のページ に新しい情報が載ったようです(Thanks: 三河屋さん)。 あとでよく読んだ上で要約を書きます――と思ったのですが,ほとんど情報がなくてがっかり。 JPEG Experts convene in Shanghai, China は以下の情報へのポインタだけです: Historical Archive - Press Kit では The JPEG committee would like to re-affirm that it has always been a goal that its standards should be implementable in their "baseline" form free of royalty and license fees. という今までの態度を繰り返し, 史実の集積 を呼び掛けているだけです。 「先行技術」(prior art)ではなく「歴史」という一般的なことばになっています。

2002年12月

今月は特にニュースがなく今年も終わろうとしている。 一つ残念なことは,JPEG委員会のサイト は Richard Clark(Concerning recent patent claims を書いた人)が自分で作っていたころは読みやすかったのに,最近は業者に作らせるようになり,フォントが8ポイント固定の灰色になって,目の良くない私にほとんど読めなくなったことである。

2003年

2004年

日本のデジカメメーカはKodakやAmpexからも特許訴訟を受けている。

2005年

2006年


奥村晴彦