名前: 永田善久 日時: 2001-07-04 18:16:57 IPアドレス: 133.100.243.*
本田様、 > を思い出しました.単語末のsが必ず「丸いs」なら``s:''と入力せずに > sのままで入力して,出力は「丸いs」にするようにできます. > とりあえず,PDFにしてみました. 拝見しました。すごいです。合成語の場合も自動処理してくれたら「完璧」 ですね。長い s と丸い s の使い分けについては、下のような記述があり ます。 「コンピュータプログラムはこうしたルールを完全に制御すること はほとんど出来ないから、長い s と丸い s は入力の際、人によっ て区別されねばならない」(H. Kopka の LaTeX シリーズ本第 2 巻 115 ページ) さて、Haralambous の作った gebrochene Schriften 3 種、つまり、 ゴシック体、シュヴァーバッハ体、フラクトゥア体を以下に簡単にまと めてみました。宜しければ、参考にしてください。 # 下に挙げた入力法は、いずれも \usepackage{yfonts} を前提として # います。yfonts パッケージが作成される前の oldgerm パッケージ # では、入力法がほんの少々異なってきます。なお、yfonts の方が # Babel や german パッケージと併用できるという点で、断然優れて # いると思います。 0. いずれもその基本字母は、大文字 25 字、小文字 27 字から成る。 小文字が 2 つ多いのは、「i と j」及び「長い s と丸い s」の区別 があるため。また、Haralambous は「時代考証」を正確に反映させて いるので、大文字のウムラウト記号は存在しない(大文字のウムラウト は Ae Oe Ue のように大文字の後に e を送るのが当時の正書法)。 1. ゴシック体 1-0. 現存するゴシック体の一番古い文献は、西ゴート族の僧ウルフィラ (Ulfila, Wulfila とも。「小オオカミ」の意) がゴート人達に宣教する ためにギリシア語からゴート語に翻訳した「旧約・新約聖書」の手写本 (500 年頃。緋色の羊皮紙に大部分が「銀」文字、一部は金文字、で記さ れているため「銀字写本 Codex Argenteus」と呼ばれる。スウェーデンの ウプサラ大学図書館在) で、ここで用いられている字体は「初期ゴシック 体」と呼ばれる。この後、ゴシック体は、歴史の流れの中で色々と変化し ていった。 1-1. Haralambous が再現したゴシック体小文字は、有名な例の「グーテン ベルクの42行聖書」から採られた。 1-2. 大文字は、また別の 15 世紀の資料から採られた。 1-3. 基本字母の他、点なし i, j もある。それぞれ \i, \j と入力する。 1-4. ae ba be bo ch ck ct da de do ha he ho ff fi fl ffi ffl ij ll oe pa pe po pp qq qz ss ssi st sz tz va ve vu の 35 個の 合字を持つ。 1-5. ss ssi st には別の合字ヴァリエーションがあり、それぞれ \symbol{42} \symbol{47} \symbol{61} と入力する。なお、合成語等に おいて合字を回避したい場合には、\/ を挿入する。この一般コマンドは シュヴァーバッハ・フラクトゥア体でも同様。 1-6. sz (いわゆるエスツェット) は "s や \ss 等で入力してもよい。 1-7. ウムラウト (um は「回る・変わる」の意、Laut は英語の loud と 語源が同じ、「音」の意) は "a \"a \"{a} といういずれの入力でもよい。 1-8. ゴシック体は通常「単独」で使用される。 2. シュヴァーバッハ体 2-0. ドイツのニュルンベルク・ウルム・アウクスブルク・マインツといった 都市では、15 世紀の終わり頃から「シュヴァーバッハ体」と呼ばれる、ゴシ ック体から発達してきた字体が現れてきた。ニュルンベルク近郊の町「シュヴ ァーバッハ」がこの名称の起源とされるが、証明はなされていないそうである。 全体的に幾分丸みを帯びたこの字体は、力強く「民衆風」であるとされる。 2-1. 基本字母の他、点なし i, j もある。それぞれ \i, \j と入力する。 また、「パラグラフ」を表す字体も用意されている。これは \symbol{60} と 入力する。 2-2. ch ck ff sf ss st sz という 7 つの合字を持つ。 2-3. sz (いわゆるエスツェット) は "s や \ss 等で入力してもよい。 2-4. ウムラウトは二つの点を添える通常見慣れた表記法の他に、小さな e を上に添える形式のものもある。前者は "a \"a \"{a} と入力するが、後者 は *a のように入力する。 3. フラクトゥア体 3-0. 名称はラテン語の fractura (break の意) から。民衆風のシュヴァー バッハ体は、当時、美的観点から「少々野暮かつ単純」と見なされていた らしい。これと併行して、16 世紀はじめ頃から、丸みが少なく文字幅の狭い フラクトゥア体と呼ばれるものが発達してくるようになる。フラクトゥア体 の大文字の多くはいわゆる「象鼻 Elefantenr\"{u}ssel」で飾られる。 書籍印刷用の最初のフラクトゥア体は 1513 年、Sch\"{o}nsperger によって アウクスブルクで創案され、これを完成させたのが 18 世紀の活字彫刻師 ブライトコプフであるとされる(ブライトコプフは楽譜出版でも有名)。 Haralambous がフラクトゥア体のモデルとしたのは、このブライトコプフの フラクトゥアである。 3-1. シュヴァーバッハ体の持つ 7 つの合字 ch ck ff sf ss st sz に加えて tz という合字も持つ。 3-2. 大文字 J を I から区別する必要のある場合に備え、専用の大文字 J も用意されている。\symbol{36} と入力する。ただし、これは一般的に認知 されていた字体ではない。また、etc.(=et cetera) を表す記号も用意されて いる。これは \symbol{201} で入力する。ただし、この記号もフラクトゥア 体出現の初期のみに使われていたものである。なお、etc. のようなラテン語 出自の語は「ラテン活字体」で組むのが正書法。 3-3. フラクトゥア体とシュヴァーバッハ体は「組み合わせて用いる」ことも 可能。その際、フラクトゥア体は「地の文」、シュヴァーバッハ体は「強調 部分やタイトル」に用いられる。 4. 引用符号について 上記いずれの字体においても、``...'' と入力してやると、「ドイツ式」の 引用符号が出力されるようになっている。なお、この引用符号はラテン活字 体のそれであるが、これは間違いではないそうである。Haralambous がモデル としたのは Breitkopf のフラクトゥア体であったことは既に述べたが、この 字体では引用符号としてラテン活字体をそのまま用いていたという。例えば、 フラクトゥア体のコンマを二つ重ねるような引用符号は後世の産物であるらしい。 なお、いずれの字体においても、行末で分綴される場合は、専用のハイフン 記号が自動出力される。 以上をまとめたのが、以下のソースファイルです。ご興味のある方は どうぞ、お試しください。 -------------------------------------------------------------- \documentclass[a4paper]{article} \usepackage{yfonts} \begin{document} \section{Gotische Schrift} \gothfamily {\i} {\j}, \\ ae ba be bo ch ck ct da de do ha he ho ff fi fl ffi ffl ij ll oe pa pe po pp qq qz ss ssi st sz ("s \ss) tz va ve vu, \\ ss ssi st {\rm vs.} \symbol{42} \symbol{47} \symbol{61}, \\ auffallen {\rm vs.} auf\/fallen, \\ "a "e "o "u \"a \"e \"o \"u \"{a} \"{e} \"{o} \"{u}, \\ ``Gotisch'' \section{Schwabacher Schrift} \swabfamily {\j} {\j} \symbol{60}, \\ ch ck ff sf ss st sz ("s \ss), \\ "a "e "o "u \"a \"e \"o \"u \"{a} \"{e} \"{o} \"{u} *a *e *o *u, \\ ``Schwabacher'' \section{Fraktur-Schrift} \frakfamily {\i} {\j} \symbol{36} \symbol{201}, \\ ch ck ff sf ss st sz ("s \ss) tz, \\ "a "e "o "u \"a \"e \"o \"u \"{a} \"{e} \"{o} \"{u} *a *e *o *u, \\ ``Fraktur'' \end{document}
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