「日本の人口は世界の2%に過ぎないのに、世界の薬の約40%は日本人が使う」というツイートが流れている。これについてはすでにNATROMさんが日本の薬の使用量はケタ違いなのか?で論じておられるが,OECDのデータが新しくなっているので,データをCSV形式(oecd_pharma.csv)にして,グラフを描き直してみた。CSVファイルには2文字の国コード(ドメイン名に使われるもの)も加えた。
pharma = read.csv("http://okumuralab.org/~okumura/stat/data/oecd_pharma.csv", comment.char="#")
par(mgp=c(2,0.8,0))
barplot(pharma[,4], names.arg=pharma[,1], las=TRUE, horiz=TRUE, xlab="USD", xlim=c(0,1000),
col=ifelse(pharma[,1]=="JP","#f39800","#0068b7"))
text(x=pharma[,4], y=(0:30)*1.2+0.5, labels=round(pharma[,4]), pos=4, xpd=TRUE)
日本は4位に上昇している。同点のように見えるIE(アイルランド)は647.7ドル,JP(日本)は648.0ドルである
さて,問題は1人あたりではなく国全体の薬の使用量を求めることであるが,これはやはりOECDのデータで提供されている国別の人口データを掛け算すればよいだろう。これもCSV形式(oecd_population.csv)にして置いておく。やはり1列目に2文字の国コードを付けた。これらを merge()
すれば,同じ名前(国コード:Code
)のところを揃えてマージ(ジョイン)してくれる:
population = read.csv("http://okumuralab.org/~okumura/stat/data/oecd_population.csv", comment.char="#")
data = merge(pharma, population)
これで names(data)
すればわかるように,6列目に人口(2011年)が加わった。4列目と6列目の積が国別の薬の使用量になる:
expenditure = data[,4] * data[,6]
日本がOECD 31か国全体に占める割合は,
expenditure[data[,1]=="JP"] / sum(expenditure)
で 11.85% になる。世界全体ではもっともっと低い値になるだろう。
冒頭の40%という値はどこから出たのだろうか?
o = order(-expenditure)
head(data.frame(data[o,2], expenditure[o] / sum(expenditure)))
のようにして上位をリストアップしてみると,
1 United States 0.43905219
2 Japan 0.11851822
3 Germany 0.07354993
4 France 0.05568568
5 Italy 0.04235009
6 Mexico 0.04048452
米国がダントツで 43.91% である。40% というのは米国のことかもしれない(しかしそれも全世界ではなくOECD 31か国の中での割合であるが)。
どなたか全世界のデータをご存じのかたはお教えください。
さっそく前野先生 @joji に教えていただいた WMS 2011 - Medicine Expenditures, Annex にあるExcelファイル s20052en.xls をCSV化して(あるいはExcelを読み込むライブラリを使って)読み込む:
med = read.csv("s20052en.csv")
med1 = subset(med, Year==2006) # 2006年までしかない
s = med1[,8]
s[med1$Country=="Japan"] / sum(s, na.rm=TRUE)
0.09540386 つまり 9.5% ほどだ。ちなみに上位は
o = order(-s)
head(data.frame(med1$Country[o], s[o]/sum(s,na.rm=TRUE)))
とすると出る。米国が1位で 32.2%,日本が2位。
1 United States of America 0.32186198
2 Japan 0.09540386
3 Germany 0.05788400
4 China 0.05209589
5 France 0.05202372
6 Italy 0.03867830
ちなみに元データの5列目「NCU」は National Currency Unit でその国の通貨。「PPP」は Purchasing Power Parity 購買力平価というらしい。
オマケとして2011年の人口の65歳以上の割合(パーセント)oecd_aged.csv もCSVで置いておく。
[2014-09-22] 日経新聞に世界の医薬品市場シェアのグラフが載っていた。出典は IMS Health のようだ。特に Global Use of Medicines: Outlook Through 2017 Report Exhibits からリンクされている Geographic Distribution of Medicine Spending というPDFが該当する。これによれば,2012年の日本のシェアは12%だが,2017年には9%に落ち込む予想らしい。
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