これは松阪大学で教えていたころのものです。
ここでいうデータベースは関係データベース(relational database,RDB)と呼ばれるものです。 関係データベースを操作するには SQL という言語を使います。 SQL はもともと Structured Query Language(構造化問合せ言語)の略でしたが,今では単に SQL(エスキューエル)が正式名になっています。
ちなみにこの query(問合せ)という語は,ソフトによっては「クエリー」のように日本式発音でカナ書きしているものもあります。
関係データベースを管理するソフト(RDBMS)にはいろいろなものがありますが,ここでは PostgreSQL(ポストグレス・キュー・エル)というオープンソースのデータベースソフトを使ってみましょう。 これは Linux(に限りませんが)で動きます。 Linux への PostgreSQL のインストールは ここ をご覧ください。
授業では news というマシンにユーザ名 www,パスワード foobar で SQL が使えるようにしてあります。 次のページから SQL が打ち込めます。
自分のユーザ名(学籍番号を小文字にしたもの)と同じ名前のテーブル(表)を作ってみましょう。 たとえばユーザ名が c01789 の人は
create table c01789(hinmei char(16), nedan int);
char(16) は16バイトまでの文字列,int は整数(integer)の意味です。
この表に値(values)を挿入(insert)してみましょう。
insert into c01789 values('りんご', 500); insert into c01789 values('みかん', 300);
挿入した列をすべて表示してみましょう。 「すべての列」は米印 * で表します。
select * from c01789;
すると次のような形式で表示されるはずです。
hinmei | nedan ------------------+------- りんご | 500 みかん | 300 (2 rows)
hinmei の列だけ表示するには次のようにします。
select hinmei from c01789;
今度は値段が 400 円以上の品名だけ表示してみましょう。
select hinmei from c01789 where nedan >= 400;
合計(sum)を求めてみましょう。
select sum(nedan) from c01789;
値段の順に並べてみましょう。
select * from c01789 order by nedan;
無指定では値段の小さい順(昇順,ascending order)に並びます。大きい順(降順,descending order) に並べるには desc を付けます。
select * from c01789 order by nedan desc;
データの更新には update を使います。
update c01789 set nedan=200 where hinmei='みかん';
行の削除は delete です。
delete from c01789 where hinmei='みかん';
上の例で使った商品データベースでは,りんごがいろいろあったら品名だけで行が決まりません。 名前だけで行が決まるような詳しい名前を付けるか,あるいは商品コードを付けましょう。
学生名簿でも,同じ名前の学生が二人いたら,名前だけで行が決まりません。 学籍番号を付けましょう。
商品コードや学籍番号のように,これが決まれば行が特定できるものを,主キーといいます。
学生名簿に「所属クラブ」という列があると,複数のクラブに所属している学生はどう扱えばいいでしょうか。
学籍番号 | 氏名 | 所属クラブ | |
---|---|---|---|
C01788 | 松阪太郎 | 野球部 | |
C01789 | 山田花子 | 茶道部 | 漫研 |
こんな芸当はできません。^^;
学籍番号 | 氏名 | 所属クラブ1 | 所属クラブ2 |
---|---|---|---|
C01788 | 松阪太郎 | 野球部 | - |
C01789 | 山田花子 | 茶道部 | 漫研 |
これだと三つのクラブに所属する人が現れたら困ります。 それに,このようにしてしまうと,あとの処理が難しくなります。
そのようなときは,複数の行に分けましょう。
学籍番号 | 氏名 | 所属クラブ |
---|---|---|
C01788 | 松阪太郎 | 野球部 |
C01789 | 山田花子 | 茶道部 |
C01789 | 山田花子 | 漫研 |
これを第1正規化といいます。
上の表では,主キーは「学籍番号」と「所属クラブ」の二つになります。 二つの主キーの値を指定すれば行が定まるので,これはまったく問題ありません。 問題は,氏名が「学籍番号」だけで決まってしまい,もう一つの主キー「所属クラブ」によらないということです。 このように,ある列の値が主キーの一部だけによって決まる場合は,表を次のように二つに分けましょう。
学生一覧表(主キーは学籍番号)
学籍番号 | 氏名 |
---|---|
C01788 | 松阪太郎 |
C01789 | 山田花子 |
クラブ所属表(主キーは学籍番号と所属クラブ)
学籍番号 | 所属クラブ |
---|---|
C01788 | 野球部 |
C01789 | 茶道部 |
C01789 | 漫研 |
実際にはクラブに属していない学生も多いので,クラブ所属表は学生一覧表ほど大きくなりません。
このように,主キーの一部だけに依存するような項目をなくすことを,第2正規化といいます。
学生一覧表は実際にはもっといろいろな項目を含みます。 たとえばコースについての情報が次のように入っているとしましょう。
学籍番号 | 氏名 | コース名 | コース主任 |
---|---|---|---|
C01788 | 松阪太郎 | 行政 | ○○教授 |
C01789 | 山田花子 | 情報 | □□教授 |
「コース名」が決まれば「コース主任」は決まってしまいますね。 そこでまた表を分割しましょう。
学生一覧表(主キーは学籍番号)
学籍番号 | 氏名 | コース名 |
---|---|---|
C01788 | 松阪太郎 | 行政 |
C01789 | 山田花子 | 情報 |
コース一覧表(主キーはコース名)
コース名 | コース主任 |
---|---|
行政 | ○○教授 |
情報 | □□教授 |
コース一覧表は,コースの数だけでいいので,たいへん小さくなります。
このように,別の項目に依存するような項目をなくすことを,第3正規化といいます。
表はできるだけ正規化するのが正しいデータベース設計です。
上のように正規化した場合,いくつかの小さな表ができます。 これらを結合して,正規化する前の大きな表に戻す方法が必要になります。
学生一覧表とクラブ所属表から,いずれかのクラブに所属する学生について,氏名なども含めた大きい表を作るには,次のようにします。
select * from 学生一覧表 natural join クラブ所属表;
また,学生一覧表とクラブ所属表から,すべての学生について,氏名なども含めた大きい表を作るには,次のようにします。
select * from 学生一覧表 natural full join クラブ所属表;
ほかにもいろいろな結合が考えられますが,これだけ知っていれば大丈夫でしょう。
参考書
参考サイト
Last modified: 2004-05-03 22:51:30