東海村臨界事故

JCO東海事業所臨界事故関連の私的メモです。

1999-10-01

昨日の朝からの東海村の臨界事故に関連して, 放射線関係の情報を探してみた。 原研の教育資料 放射線と正しくつきあうために が平易で詳しい。

1J/kg の吸収線量を 1Gy(Gray,グレイ)という。 これに人体に対する影響を考えてガンマ線換算した(実効)線量当量の単位が Sv(Sievert,シーベルト)。 年間日本人の自然被曝量がラドン以外で 1mSv(ミリシーベルト)程度だが, ラドンの影響もこれと同程度以上ある(部屋の換気にもよる)。 成田・NY間の飛行で 0.2mSv(宇宙線の量は地上の100倍), X線撮影で 0.3〜10mSv 程度。

1999-10-02

核燃料サイクル開発機構環境監視結果 で東海村近辺の放射線量がリアルタイムで見ることができる。 年のため ここ にも置いておく。 JCO東海事業所臨界事故発生は9月30日10:35分ころであるが, その時点では観測値に異常はない。 ところが, 9月30日20:00に東海村舟石川でバックグラウンドより1桁近く大きい 0.296μGy/h のγ線を記録している。 核燃料サイクル開発機構東海事務所内での20:00の値はほぼ通常通り。 水や土壌から放射性物質が検出されていないことから考えて, 核分裂で生じた放射性ガスの影響が考えられる。

オンライン新聞もいくつか見たが, 国内では日経と朝日が詳しく,内容も科学的。 朝日は職員が見た「青い光」を水晶体のシンチレーション光かもしれないとしている。

その後のテレビによれば水と反応(?)して青い光が出るということである。

24Na が土壌 1kg あたり 64 Bq(ベクレル = 崩壊数/秒)観測されたそうである。 放射線が当たってできたのであろう。 人体に含まれるカリウム40が約 4000 Bq であることを考えると, ほとんど無視できる量ではある。

原発事故災害サバイバルハンドブック原子力安全研究グループ (京大),などを見てみた。 今回は役に立たないが,ヨウ素剤の代わりにイソジンガーグルが使えないか[追記:使えない。飲まないほうがよい]。

1999-10-03

科学技術庁東海村ウラン加工施設事故関連情報 はけっこう最新情報が入っている。

1999-10-07

とりあえず事故後約1週間の fj.soc.nuclear と fj.disaster.nucleus の中身をアーカイブしておく。

BBCの投稿欄 には,日本のマスコミはBBCに比べて取り上げたのが遅く,内容も少ないという声が多数ある。BBCでは屋根に穴が空いたところを放送したらしいが日本のマスコミはそのようなものを流していない。投稿から引用すれば

... whereas the photographic coverage you provided showed clearly that damage to the roof of the building where the accident happened, photos in today's Japanese newspapers and indeed aerial shots on this evening's NHK news showed absolutely no damage.
ということである。放送の 録画 はもうアクセスできないが,そのうち2コマが ここ にある。報道統制がされていたという噂もあるが真実かどうか不明。

1999-10-08

臨界事故が発生したジェー・シー・オー転換試験棟(上方から見た写真) が発表された。 問題の写真 とはまったく棟が違うようだ。

1999-10-09

何日か前になるが,次のようなメールが転送されてきた。 レポートの作者は名を明かせば辞職しなければならなくなるので匿名とのこと。 一部文字化けがあるがそのまま転載する。 なお,後にも書くが,これは単位もおかしいし内容も明らかにおかしいので, デマに間違いない。

昨日の夕方から現地近辺に入り、先程交代して帰宅しました。
某TV局の報道局に属している者です。今回の事故、かなりの報道管制が敷かれており、
NHKすら大本営発表となっていますので、お気を付け下さい。
漏れだした放射線量は、広島型原爆より遥かに大きい規模です。
一時期は午前4時近辺にて臨界による爆発が起きる可能性もある
との事で、記者陣は日立市待機となりました。
(しかもヨード液を飲まされました)
 ご存知の様に民放では、ニュース・天気予報などの報道局枠に
電力がスポンサーとして入り込んでおり、NHKに於いても審議
委員会の理事は電力各社の社長クラスという状況にあり、
現状では箝口令が引かれている情報も含め、数値を低く設定して
公にして良い情報のみ報道されています。 
通常、現場にはヘリが出たりSNG中継車が出る物ですが、今回は
全て待機し、現場の警戒線内に入ったり撮影をするなとの
お達しが、局の上層部より出ております。
被爆作業員の数値は8m/sgとの報道も出ていますが、実数は
15m/sgとの話が現場記者間の情報として流れております。
現状では、;
!
B影出来るように体裁をある程度整えてから、やっと
代表取材カメラが入る雰囲気になっております。
 臨界が一応終息したとの発表にも関わらず、JRが未だに動いて
いない事でもお察し頂けるかと思いますが、実体は報道されている
事態より数倍大きな事故でありますので、こんな職ながら敢えて
言わせて頂くと、今回の場合は政府・自治体・マスコミを信じず、
各自の責任に於いて防御される事をお勧め致します。
ある関係者の言質によると、規模は報道の約8倍との事です。
お気を付け下さい。
なお、この文章は転載自由としますので、関係各所に願います。

大本営発表を鵜呑みにしないという態度自体は正しいと思うが, 上の内容は明らかにおかしいし,単位もおかしい。 明らかにデマであろう。

その他の情報。 茨城県 にはけっこうまともな情報が蓄積されている。 東海村の トピックス にもニュースがいくつかある。 原子力資料情報室 (「脱原子力を実現する市民の情報センター」と副題にある) にもさまざまな情報が収集されている。

1999-10-10

ここ にも問題のBBC放映画像が比較的鮮明に載せてある。 もっとも,建物の誤認は明らかである。

1999-10-12

臨界事故をめぐる元JCO社員との往復書簡 なるものがMSNジャーナルに出ている。


リンクはご自由にどうぞ。

松阪大学[追記:←これは当時の所属] 奥村晴彦 okumura@matsusaka-u.ac.jp[追記:←これは当時のアドレス]

Last modified: 2011-04-13 12:26:21