Japanese high-school computer science class, anime

高校の教科「情報」の現状

普通高校の必履修の教科「情報」は2003年度から始まりました。標準単位数は2単位で、50分×週2回×1年間(35週)に相当します(法定「35週」は厳密なものではなく、行事などでつぶれる週がかなりあります)。

「教科」はいくつかの「科目」からなります。教科「情報」の科目は、入学した年によって異なります。

2003〜2012年度に入学した高校生は、三つの科目「情報A」「情報B」「情報C」から一つ(実質的に学校が選ぶ)を学びました。これらはそれぞれ日本の情報教育の三本柱といわれる「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」に重点をおくものです。

2013〜2021年度に入学した高校生は、二つの科目「社会と情報」「情報の科学」から一つ(実質的に学校が選ぶ)を学びました。

2022年度以降に入学した高校生は、全員が「情報I」(ないしは同等の科目)を履修します。高校によっては、選択科目の「情報II」も履修できます。「情報II」を開設する高校の割合は、文科省PDFによれば、東京都は43%ですが、4県はゼロです。

「情報I」などで学ぶ内容は、文部科学省の平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)からリンクされている高等学校学習指導要領(平成30年告示)というPDFファイルに書かれています。学習指導要領は法的拘束力がありますが、あまりにも簡潔なので、これを補った高等学校学習指導要領解説が作られています。「情報I」などは情報編で解説されています。こちらはあくまでも「解説」で、法的拘束力はありませんが、文部科学省が作ったものですので、教科書の執筆者はこれを熟読して忖度せざるを得ません。

「情報I」教科書12種類のシェアは中野先生のこのスレッドがわかりやすいと思います。会社別では実教、プログラム言語別ではPythonが多いのですが、トップシェアは実教のVBA版です。

なお、学習指導要領やその解説には、「共通教科情報科」(「情報I」「情報II」)のほかに、「専門教科情報科」というものが記述されています。こちらは、「情報科」などの特別のコースを設置する高校で教えられるものです。さらに、工業高校や商業高校ではまた別内容になっています(指導要領解説「工業編」「商業編」参照)。これら以外でも、学校設定教科・科目で代えている場合もあります。

「情報I」は2025年1月の大学入学共通テストに出題されることが決まりました。国大協もこれを推していますので、少なくとも国立大学はこれを利用するはずです(しかし北海道大学は初年度は配点ゼロ、筑波大学は25%→50%→75%と次第に配点を拡大)。

共通テストの試作問題としては、情報処理学会の大学入学共通テストへの「情報」の出題について(2020年12月2日)からリンクされている「情報」試作問題 (検討用イメージ)(PDF)と、大学入試センターの令和7年度以降の試験に向けた検討について(2021年3月)で公開された「サンプル問題『情報』」、2022年11月に公開された試作問題があります。ちなみに最初の「検討用イメージ」は、大学入試センターが作って限られたところに配付していたものを、情報処理学会が大学入試センターと調整して(つまり説得して)公開に持ち込んだもので、もともと公開するものではなかったようです。

共通テスト「情報I」は第1問〜第4問の4問構成で、第1問は比較的軽い問題、第2問はさらに考えさせる問題、第3問はプログラミングの問題、第4問は「データの活用」についての問題になるようです。プログラミングは、教科書によって扱う言語が異なるため、「共通テスト用プログラム表記」という日本語の疑似コードで出題されます。

ちなみに、2024年までの共通テストや以前のセンター試験にも、数学②の時間枠で選択できる「情報関係基礎」という科目がありました。これは工業・商業などの情報関係の基礎科目に対応するもので、第1問以外は「情報I」よりやや難易度が高いようです(情報関係基礎 アーカイブ参照)が、「情報I」の出題を占う上での貴重な材料です。2025年からは、「情報関係基礎」はなくなり、「情報I」に一本化されます(ただし2025年に限り、浪人生に対応するため、「旧情報」(「社会と情報」・「情報の科学」)、「情報関係基礎」も出題されます)。