アナログとデジタル

アナログデータは連続量、デジタルデータは離散量(分離量)、とよく言われています。理屈の上では、離散量は整数(の部分集合)に対応づけられる値ですから、有限個とは限らないはずです(たかだか可算個)。でも、コンピュータでは有限個しか扱えませんから、デジタルデータのとりうる値は有限個といえるかもしれません。無限個か有限個かを問うような問題は微妙です。

アナログとデジタルの区別は、微妙な場合もあります。例えばアナログ時計は、UI(ユーザインターフェース)としてはアナログですが、中では振り子・ヒゲゼンマイ・水晶などの振動をカウントしているので、デジタルな仕組みといえるかもしれません。秒針の動きを見ていても、ピクッピクッとデジタルに動いているのがわかるものもあります。

デジタル庁の「アナログ規制」の対象とされるフロッピーディスクは、じつはデジタルです。ファクス(G3 fax以降)はデジタルです(紙をスキャンしてデジタルデータにし、データ圧縮をして電話回線で送ります。昔のファクスはアナログでしたのでデータ圧縮ができず、1枚送るのに何分もかかりました)。

「デジタル」は、「情報A」「情報B」「情報C」、「社会と情報」「情報の科学」のころの学習指導要領には「ディジタル」と表記されており、教科書も「ディジタル」でしたが、「情報I」「情報II」の学習指導要領にはなく、学習指導要領解説は「デジタル」という表記になったので、教科書は一斉にこれに合わせて「デジタル」になりました。学習指導要領解説が「デジタル」になったのは「デジタル庁」ができたためという説もあります。

「情報I」の学習指導要領解説には「情報のデジタル化に関して標本化,量子化,符号化,二進法による表現などを理解する」などと書かれています。例えば音の信号は、CD音質なら44100Hzで標本化し、16ビット量子化し、ビット列に直すという符号化で、デジタルデータになります。デジタルカメラはセンサの配列で標本化し、RGBそれぞれ8ビット以上で量子化し、YCbCr色空間に変換してDCT符号化しJPEGファイルにするといった流れになるでしょう。

なお、「digit」は「数字」という意味で、「digital」は「数字で表される」が元の意味です。例えば時計が針の位置ではなく「12:34」のような数字で時刻を表すなら「digital」な時計です。

JIS X 0001「情報処理用語―基本用語」には「ディジタル」が「数字によって表現されるデータ及びそのデータを使う処理過程又は機能単位に関する用語」、「アナログ」が「連続的に可変な物理量、連続的な形式で表現されたデータ及びそのデータを使う処理過程又は機能単位に関する用語」と定義されています。

アナログ音は標本化・量子化を経てデジタルになるので、デジタルでは教科書にある図のような階段状のカクカクした波形の音を聞かされていると思っている人もいるようですが、デジタルをアナログに変換する際に「ローパスフィルタ」というものを通して滑らかな波形に戻しますので、ご安心ください。